第1回 学生デザインコンペ受賞作品

個人住宅部門「ずっといたくなる家」

建材提案賞

はがす

高橋 杏奈(工学院大学)
岸田 真宏(工学院大学)


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コンセプト

自然界の中で外と内の境界は曖昧である。日本は古くから住宅の中に、縁側や土間などの中間領域を作り出し、外でも内でもない空間でのコミュニティを大切にしてきた。しかし、近年、私たちの住むまちでは、プライベートとパブリックに明確な線引きをしている。

一般的な住宅の壁や屋根は可変性を持ち合わせておらず、境界となっている。我々はこの壁や屋根の在り方に疑問を抱いた。パブリックに開きたいときははがす、プライバシーを守りたいときは閉じる、必要に応じてはがすことのできる、そんな壁や屋根があってもいいのではないだろうか。

はがれてできた空間は、外が内に入り込む空間でもあり、内が外に滲み出る空間でもある。それは時に地域住民が集う空間になり、時に家族だけのくつろぎの空間にもなる。その時々の生活や気分に合わせた空間を、住人自らがはがすことでつくる家。そんな建材でつくられた空間は「ずっといたくなる家」になると、我々は考える。

講評

審査委員長 西沢 立衛 氏

 はがすことで開閉するというアイデアは、壁全体で考えると無茶苦茶だが、もう少しスケールを落としてドアとか窓といった開口部くらいの大きさで考えると、新鮮なアイデアに感じられる。開口部の開閉はふつう軸回転的なものか、もしくは引き違い的な機械的な運動に限られるが、この開口の開閉はもっと人間的というのだろうか、斜め方向に開ける、もしくは手の軌跡に沿って円弧状に開閉する。その人間的・生命的動きというものに新しさを感じた。

審査委員 百田 有希 氏

 従来の開口部の開け方「開く」や「引く」、「たおす」に対して、「はがす」という新しい開け方を提案しています。どうやって「はがれる」機構を実現するのかは難しそうですが、はがれた壁がウインドキャッチャーの役割を担ってスムーズに風を呼び込んでくれたり、湾曲する壁が照らされてぼんやりとした光が部屋の中に充満して来たり、新しい開口部のアイデアが生まれてきそうです。

審査委員 松原 亨 氏

 しなることで開き、閉じる。その動きが建材の材質に依存するというアイデアが新鮮。

審査委員 三協立山株式会社 三協アルミ社 技術開発統括部 統括部長 白井 克芳

 隔てるものと思いがちな屋根、壁を内と外を区切ると同時に繋ぐものと考え住まう人が関わることで完結する建材提案は、やさしく有機的に包まれた空間を演出し、服に包まれたように生活シーンをより豊かにするための無限の可能性を抱かせてくれる。

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