第10回 受賞作品

三協アルミ賞

モノの駅

喜多  謙介(鹿児島大学)
中元  杏(鹿児島大学)

コンセプト

 駅は、「乗り物に乗る・降りる」という明確な機能を持っており、その乗り物に対応して駅はデザインされる。
 しかし、私たちにとって「寄り道」とは、「目的も動機もなく、なんとなく気が向いたから行うもの」であるため、人に対して明確な機能を持つ「駅」という存在は、寄り道とは少し遠い存在のように感じた。
 では、「人のためではない駅」の場合は、どうなるのだろうか。
 「モノの駅」では、人が乗り物となり、モノが乗客となる。
 この駅は、人に対して明確な機能を持たず、人はあくまで脇役である。そのため、行動や活動を強要されず、無目的な自由を獲得することができる。
 「モノの駅」とは、駅に訪れた人や駅の周辺住民が誰かに譲りたい物や必要がなくなった物を置いていき、駅に置かれてる物の中で欲しい物があれば持って帰る。という、モノを人から人へとつなぐ拠点である。
 モノの駅は、無目的な駅であると同時に、顕在化する駅、姿を変える駅でもある。

講評(敬称略)

審査員 柿澤 秀則

 「モノの駅」は、「人が乗り物、モノが乗客」という革新的なコンセプトを、特定の建材の機能性と組み合わせることで、単なる構造物ではなく、地域の暮らしと環境に貢献する新しい公共空間の可能性を提示しており、社内審査員一同、高く評価いたしました。「駅」という既存の概念を「モノの循環拠点」へと再定義する発想が非常にユニークです。この独自性を物理的に支えるのが、可動式のアルミ板材ですが、一枚の板材がベンチ、机、棚、庇、壁と、状況に応じて様々な機能に変化するというアイデアは、まさにコンセプトと建材が一体となった独創的な提案であり空間の使われ方が固定されず、常に変化し続ける「姿を変える駅」という考え方そのものが、建材の柔軟な活用によって実現されている点が素晴らしいです。建材としてのアルミ板の可動システムは、技術的に十分実現可能であり、製造・施工の現実性も高いです。運用の側面では、モノの管理や衛生、防犯といった課題も想定されますが、シンプルな構造であるため、地域住民が主体となって運営する小規模な拠点からスタートし、モデルケースを積み重ねていくことで、全国に普及する可能性を秘めています。

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