第10回 受賞作品

特別賞

都市的淀み場

櫻井  陽一朗(東京大学)
柴崎  玲那(東京大学)

コンセプト

 目的地までの経路も時間も金額も、全てが瞬時に片手の中で分かってしまう今日、その中にあったかもしれない偶然的な出会いや時間の流れはなかったものとされてしまいます。
 まして、都会の中心において、人々の中にあったかもしれない偶然性はどれほどでしょうか。
 今回、私たちは東京の中心部を流れる神田川の4つの橋(お茶の水橋、聖橋、昌平橋、万世橋)に着目しました。これらの橋は、人や車、自転車、鉄道、生き物、時間がとどまることなく行き交う橋です。そして、その交通の要となる場所であるにも関わらず、橋自体には活動や交流は見られません。そこで、素通りするのではなく、ふと寄り道をしたくなるような、そしてその結果、淀みが生じるような駅を橋に設けることを考えます。各橋に偶然的に生じた様々な出来事や活動が川全体や周辺地域へと伝播していくのです。またそのつながりと水上の利点を活かし、災害時の利用も想定しています。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 お茶の水駅の神田川にかかる四つの橋を改造して、河川空間に淀みの場、滞留スペースを作り出し、移動で忙しい人々に寄り道の機会を与えるという提案。神田川全体に人々の活動が立体化して広がり、楽しげな都市空間が作られることが、ドローイングで魅力的に示された。ただ二次審査では、橋四つだけの模型が示されて、神田川全体の立体的魅力が表現されておらず、その点は残念だった。

審査員 家成 俊勝

 この案は橋を駅と見立てて、流域のデザインに取り組んでいます。橋の袂というのは、かつて荷揚げや交通の要所として非常に重要な場所でした。さらに川まで降りていける階段が、今よりも川と人の関係を物理的にも近づけていました。現在の多くの川は、ただ水を流すという機能だけになっています。そのような状況において川の移動手段や人や生物の居場所をデザインすることが都市での新しい行動を生み出す面白い提案だと思いました。

審査員 大西 麻貴

 神田川にかかる4つの橋に淀みを生み出す場所を提案することで、橋を素通りするのではなく立ち止まる居場所へと変えていく案。一次審査の時に提示された、4つの橋がまるで立体的に繋がったかのようなパースが非常に魅力的だったのに対して、二次審査でのプレゼンテーションが、各橋ごとの個別の提案となっていたことが少し残念でした。より神田川全体のつながりを感じさせる提案となっていたら、さらに素晴らしかったと思います。

審査員 百田 有希

 自分たちの提案が例えささやかなものであっても、川・道路・鉄道が立体的に交差する敷地全体の特性が浮かび上がらせることができれば、まちの歴史を含めた大きな提案になり得る可能性があったと思う。敷地模型を作成して、人工物と自然地形が複雑に入り混じった敷地の特性を、もの(模型)を通して考えると良かったのではないかと思う。

審査員 柿澤 秀則

 都市の動脈である橋に「淀み」という概念を導入し、人々の滞留や交流を促すという着想が独創的です。各橋の地域性を丁寧に読み解き、それぞれに異なる機能(学生街のゲート、ステージ、マルシェなど)を付与している点に具体性がありました。水辺との関係性強化や災害時利用の提案は、公共施設の多機能化とレジリエンス向上という現代的な課題にも応えています。橋の構造的な制約、交通機能との両立、水辺での活動における安全性確保や管理運営の複雑さへの対応は検討課題です。具体化に向けた挑戦が楽しみです。

  • Facebook
  • Instagram
  • X(旧Twitter)
ページトップへ