第10回 受賞作品

特別賞

幻影の駅

井川  凌佑(鹿児島大学)
喜多  謙介(鹿児島大学)

コンセプト

 現在の駅は境界によって閉じられ、地域から切り離された均質な空間となることが多い。私たちは駅を地域の顔であり拠点と考え、地域と溶け合う駅を提案する。そのために2つの「寄り道」を計画した。第1に駅から地域への寄り道である。出入りを2階動線とし、壁を減らして風景を眺められる設計とした。2階には広場や休憩スペースを併設し、カフェや地域情報の発信機能を組み合わせることで、利用者が地域の魅力に気づき、寄り道する機会を誘発させる。第2に地域から駅への寄り道である。駅の輪郭を大きく取り、ピロティ空間を主体にすることで、街の通路や広場と連続し、日常の延長として自然に入り込める場とした。さらに屋上へ街路を引き込み、歩くうちに駅に至る体験を生み出す。こうして駅は形を定めず、地域に溶け込む「幻影の駅」となる。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 緑化された人口地盤のような屋根が有機的に広がっていき、街の通りや広場をつなげ、駅と街を繋げる。水のように広がっていく形の自由さが、街の各所を合理的につなぐ機能性も持ち得るという印象があり、「地域と溶け合う駅」という作者の言葉に説得力を感じた。この方向で、より詳細に設計していけばもっともっと良くなる案だと感じた。

審査員 家成 俊勝

 不定形な形の屋根が駅やその周辺を覆っており、その屋根の上と下に人の居場所をつくりだしていく提案ですが、資料にある矢印のような動線や視線によって人の行動が限定的になっているように思います。この場所で想定できる活動とはいった何なのかをもう少し具体的に考え、本提案の背後にどのような意志があるのかを伝えてもらえるとよいかと思いました。

審査員 大西 麻貴

 半島のように突き出していく形と、湾のように凹んだ形を組み合わせた屋根によって、さまざまなものの交差点にふさわしい駅の提案となっていました。形がもたらす居場所の差異がもっと明快に提案に現れていることと、周辺環境との関係が豊かに紡がれていることの二点がブラッシュアップされると、より鹿児島にふさわしい駅となるのではないかと感じました。

審査員 百田 有希

 JR鹿児島中央駅から市街地中心部を抜け、はじめて海に視界が開けるところに駅が立地している。自分たちが見つけた幾何学のルールが内部の機能を満たしたり、近傍に場所をつくるだけではなく、より大きなスケールの桜島とも呼応する提案になっていたらより良かったと思う。

審査員 柿澤 秀則

 「幻影の駅」というネーミングが象徴するように、駅の存在感を希薄化し、地域との一体感を追求する意欲的な提案です。2階動線からの眺望やピロティ空間の多用は、駅に開放性と透明感を与え、視覚的な広がりを生み出します。駅の「幻影化」は、公共交通機関としての視認性や案内性、防犯性との両立を難しくする可能性があります。また、ピロティ空間が多用される中での悪天候対策や、駅としての機能(改札、運行管理など)の具体的な配置計画が課題となるでしょう。新しい視点を活かした実現への工夫に期待します。

  • Facebook
  • Instagram
  • X(旧Twitter)
ページトップへ