第9回 受賞作品

特別賞

境界の峰

及川 純也(仙台高等専門学校 名取キャンパス)
佐野 竣亮(仙台高等専門学校 名取キャンパス)
佐藤 琉人(仙台高等専門学校 名取キャンパス)

コンセプト

 人口減少が進む日本には多くのfringeが存在する。その中で子供と大人が豊かな学びを得るためには既存の学校だけでなく、もっと公共施設や商業空間との関わり方を再構築することが求められていくのではないだろうか。都市とフリンジの関係性、既存の学校を超えた町スケールでの学びの空間を通してこれからの日本のあり方を考える。対象敷地は宮城県山元町、東日本大震災の後コンパクトシティとして生まれ変わったこの町は、コミュニティの分断や敷地の窮屈さとった課題を抱えている。そこで駅前の商業施設を解体し、周辺の機能を含めた1つの大きな建築物を作ることで町のみんなが所属しているような大きくて緩やかなスケールで捉えることを考えた。あえて都市的なvolumeやframeを挿入することにより、自然と都市機能が一体化した空間が山元町と都市を結ぶことになり、都市とfringeの関係性はこれまでよりも豊かに生まれ変わる。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 駅前に点在するさまざまな施設をぜんぶまとめて山にしてしまう、という案で、これも荒唐無稽な案で、そのパワーを評価した。一見無茶苦茶ながら、冷静に考えるとよくできているとも言えて、東北の寒い冬を過ごすのに、こういう駅ビル施設はいいかも、とも思った。ただ電車が山の中に入ってくるときはさぞやうるさいだろうなと思わなくもない。もっともっと面白くなる案だと思う。

審査員 家成 俊勝

 駅前再開発で大きな山のようなボリュームを建てている案で、その山の表面は農園に、内部に駅を含めた色々な機能が納まっているが、それらが破綻しているように見える。災害の経験がこのような巨大な計画に行き着くのかと思うと複雑な思いもある。20世紀中頃に妄想された未来都市のような、アニメのような感じで現実感がなく、今回のコンペの応募案で実際に建つ可能性が最も低い案であった。逆にいうとコンペにおいてビジョンを投げかけるという意味では評価できる。

審査員 大西 麻貴

 駅前に巨大な山をつくり、商業や学校、畑までをも含む複合施設とする提案。一見暴力的にも見える提案であるが、不思議なパワーと明るさがあり、土地に対する愛情を感じて、魅力的であった。こうした建築が、どのような状況であれば実現可能なものとなるのか、プレゼンテーションを聞いているこちら側が考えたくなるような、楽しい提案であった。

審査員 百田 有希

 一見荒唐無稽な乱暴な提案に思ったのだが、話を聞いていると、大きな建築が持つ可能性を素直に考えた、ポジティブなエネルギーに溢れる提案だと感じた。駅前の巨大再開発や郊外のショッピングモールに対して、別の可能性があること、大きく一つに集まることの可能性を考えさせられた。

審査員 白井 克芳

 一般的に建築計画では、CNや省資源、建築予算など様々な前提条件や要求に縛られる中、震災後に誕生したコンパクトシティの窮屈さや機能低下を愚直に憂い、その解決を大胆に図った壮大な提案に脱帽です。こういった固定観念や既成概念に捉われない自由な発想と勇気を持った提案が新しい価値を切り開き、今後の建築をより進歩、拡大させていくように感じます。また提案に負けない大迫力の模型からは、建築を学ぶことや建築に挑む楽しさが溢れており、この建築デザインコンテスト開催の主旨を十二分に満足してくれる作品です。

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