最優秀賞 | 偶発的な湧水と学び、そしてその共鳴 |
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優秀賞 | 個性の出土 |
学びが奏でる山賛歌 | |
寄り道的学びのすすめ -地形によって生まれる開かれた学びの場- |
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特別賞 | くるくるスクール |
境界の峰 | |
いただき、つくり、つながり、かえす | |
三協アルミ賞 | 「好き」が芽吹き、共鳴する |
木許 順賀(横浜国立大学)
生徒を一つの敷地に集め教育する従来の学校ではなく、誰もが寄り道をするように学び合える場所を目指した。敷地である横浜市本牧は谷戸地形によって地形が入り組んでいる。その結果大きな崖に対して行き止まりが生まれてしまうが、それらをスロープによってつなげることで直線的ではない寄り道したくなる空間をつくった。それらは表現の舞台や食の広場、読書の山となり大人子供関係なく学び合う空間になる。
起伏に富む谷戸地形の斜面に建つ建築で、複雑な地形を乗り越えて広がる建築の形状によって、丘や谷、斜面、袋小路など様々な場所をつないでゆくという案だ。たいへん魅力的な提案で、模型もよかった。谷戸地形の細かいスケール、そこに建つ小住宅群のスケール感に比べてかなり大きな建築が大々的に展開し、スケール的な違和感があった。
入りくんだ谷戸地形の特徴を読み、境界になっている崖を土木的な手つきで操作して色々な場所をつくりだしている。窪んでいるところが円形劇場のようになっていたり、突き出している方は段々畑と道になっていたりする。どちらにしても自然がつくり出したものと人間がつくり出したものがドンとぶつかって場所ができているのがよい。緻密に計画すれば岩窟寺院のような迫力も出せるのではないかと思う。谷戸地形を使うことが先に立ってしまい、学校がここにある必要があるのか、それは少し分かりかねるところである。
斜面地をつなぐことで生まれる新たな道が、寄り道する場所となり、寄り道することと学ぶこととが一体となる提案であった。道が学びの場となることで、学びが学校の中に閉じるのではなく、まちや地形と連続的になることに魅力を感じた。目的的な学びではなく、自然発生的な学びの提案とも言え、その可能性が建築の提案にまで丁寧につながっていたら、より素晴らしかったと思う。
地形的な特徴に着目し、そこから自然と人が集まる場所をつくっていこうとする姿勢に共感した。地形的な特徴を尊重する際に、どこまで新たに手を加えるべきかという問題がある。新たに提案されているものがやや過剰に感じた。地形と建築の関係がもっと相補的なものであるとより良い提案になったのではないかと思う。
この作品は短所であった地形に役割と機能を持った人工物を付加することにより、とてつもなく魅力的なランドスケープを実現させています。視覚的に訴えてくるその魅力は、「行ってみたいという欲望」を抱かせ学びのきっかけを与えてくれると同時にめぐりたい衝動にかられます。その過程で得た知識や情報は、自身の考え方や姿勢を変え成長させてくれます。この学びの空間は寄り道の域を超え名所として認知されるばかりか、日本国土の75%の面積を占める山地丘陵などの過疎地帯の活性化手段となり、持続性社会実現に向けての大テーマ「人間と自然との共生」を解決する建築の役割を存分に発揮した大作と言えます。