第9回 受賞作品

特別賞

くるくるスクール

井川 日果瑠(東京都立大学大学院)
山田 貴嗣(東京都立大学)
村上 祥太郎(東京都立大学)

コンセプト

 学びには目的意識が必要であると考える。まちに対して閉じた学校に対して、まちの循環の一部となる役割を与えることで目的意識を持った学びを提供し、まちと密接に関わる学び場を提案する。身近な循環から、アップサイクル場としての役割を学校に付与する。資源を再利用し販売するまでの流れを目的として与えることで、アップサイクルの過程で必要な知識を得るための自発的な学びを促す。まちと繋がりつつ、学び場のまとまりを保つために校庭は内包され、資源、リサイクル、加工の3つの帯がアップサイクルの流れを可視化する。授業形態の変化により、均質的な教室群は解体され、大きさの変化する帯に機材やゴミ捨て場、入れ子状の特別教室が埋め込まれることで、その周囲や隙間に多様な学び場が創出される。また、地域通貨ゴミポを通じて、生徒は工作物の製作を、街の人々は資材の提供と工作物の入手を行うことで、まちに資材の循環が広がっていく。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 渦巻きのようなダイナミックな形を持った建築の提案で、リサイクル工場やまちの人々の施設も含んだ案だ。全体として明るく楽しい案だった。また造形的センスがよく、二種類の模型に魅力を感じた。渦巻きの形をとることで動線がうまくいかないところがあったりして、渦巻きがもう少し生命の中心のようになっているとなお高く評価されたのではないだろうか。ダジャレ的タイトルもいい。

審査員 家成 俊勝

 資源を循環させるためには、さまざまな知識や技術が必要になるので、実践を主とするよい教育の機会になりそうである。資源を取り出すことや再利用するための技術には高い専門性から簡素なDIYまでグラデーションがあるので、さまざまな人の参加や交流や協働を生み出す機会になりそうである。建物の計画では、用途を物理的にも思考的にも横断するという図式は分かるが、はたして資源、加工、リサイクルと分けてよいのか。分類やその繋がりにもう少し工夫が必要だと思う。

審査員 大西 麻貴

 学校での学びを、思い切ってまちの資源循環のプログラムを中心に再編成してしまうことで、学校のあり方も、まちとのつながり方も変えてしまう提案であった。資源が解体、分別され、アップサイクルされる流れそのものが、渦巻き状の建築形態に置き換えられるというストレートな解答が魅力的であった。渦巻き状の帯と帯が隣り合う時、そこにどのような学びが生まれるか、あるいは帯がまちへとつながっていく端部でどんなことが起こるか、といった、形態がもたらす可能性を活かし切った提案になっていたらより良かったと感じる。

審査員 百田 有希

 学びの場がまちの資源循環の場と一緒になる提案で、渦巻きの形が循環のプロセスを喚起させ面白いと思った。ただ循環のプロセスと渦巻きの形の関係がやや不十分で、流れとして表現するのであれば、入口と出口はどうあるべきか、また異なる流れが合流する場所ではどのようなことが起こるのかなど、形とプログラムがもっと有機的な関係を結んでいると良かったのではないかと思う。

審査員 白井 克芳

 「資源の枯渇」や「廃棄物の増加」といったグローバル課題に建築を通して正面から取り組んでいる作品です。資源循環社会の実現では、法整備による社会ルール以上に「人の理解とそれに基づく行動」が重要と言われています。年代、性別、学歴不問の形で「知ることができ」「学ぶことができ」「体験でき」、「資源循環」が当たり前と教育していくこの作品の仕掛けに、うまさと提案力の強さを感じます。また校庭を中心に「資源」「リサイクル」「加工」の帯が外側に渦巻き状に開け、街とのつながる境界に近づくほど街の人の感心や 欲求度をくすぐるモノや形にしていることも工夫を感じます。

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