第9回 受賞作品

優秀賞

学びが奏でる山賛歌

橋本 菜央(法政大学大学院)
成田 駿(法政大学大学院)

コンセプト

 私たちは能動的な「学びの循環」を絶やさずし続けることが真の学びであると考えます。現在の学びの場である学校のように限られた年代の受動的な学びではなく学校の外に真の学びの場を創造します。対象敷地は山の恵みを中心とした「学びの循環」により千年単位で持続している千年村に認定されています。しかし時代の変化に伴い山と暮らしの距離が徐々に離れかけています。そんなこのまちの山に建築する「山の学び舎」は学びが山全体に広がり、そしてまち全体に広がっていきます。「山の学び舎」はこれまでの千年からま学び、次の千年に繋がる場です。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 山の中のとある農村を舞台に、山の学びと学びの循環を提案する案だ。スケッチも模型も丁寧でうまい。建築物の設計という意味では多くの課題を残すものの、少なくともプレゼンテーションという意味では、今回の全応募案の中で飛び抜けたレベルの案であった。

審査員 家成 俊勝

 二次林がもたらす恩恵を受けつつ維持していく活動は人間同士の協力を必要とする。古くからの住民と新しい住民の間にそういった協力を生んで関係性をつくり出すといういい提案であると思う。山裾に計画された建築は高さを変えながら小さなボリュームが並んでいて佇まいもよさそうであるが、作業に適した床面積の大きな屋根のある場所がないのが惜しい。山での仕事と建築がどのように関係するのか、一度実際に山に行き、そこで働いてほしい。

審査員 大西 麻貴

 一次審査でも魅力的なドローイングに惹かれたが、二次審査で模型を見て、より提案の確かなスケール感覚が伝わってきた。一つ一つの居場所が丁寧に設計されており、こういう空間で学んだら楽しいだろうな、と素直に感じさせる提案であった。山から学び、山に還元するというアイデアを実践しようとした時に、その新しい学びが建築そのもののあり方にもっとダイレクトにつながっていたら、より説得力のある提案になったと感じる。

審査員 百田 有希

 イメージスケッチ、図面、模型どれをとってもレベルが高く、一つ一つのものが試行錯誤を経て、自分たちがこうあるべきだと考え表現されたものだと感じた。その完成度は他を圧倒するものがあった。千年単位の学びの場を構想するのであれば、建築がもっと周辺環境のスケールの大きなものと関係しているとさらに良かったと思う。

審査員 白井 克芳

 グローバル課題である自然環境、食糧問題、人権などへの取組で中核をなすのは、一人一人の考え方、取組姿勢であると言えます。またそれらは与えられるものではなく、能動的な学びから自らが生み出していくものと考えます。この作品は移り行く時代、環境の変化に対し、山の恵みを起点に受け継がれてきた先代の知恵が持続可能な文化を作り上げてきたことに着目し、現代の一方通行的な学び環境に対し、「能動的な学びの循環環境」を実現することこそが「持続可能社会の実現」に必要不可欠であることを強く主張している崇高な作品と言えます。

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