第7回 受賞作品

特別賞

谷中の貫き土間 ー食がつくるまちのサイクルー

今村 倫里伽(早稲田大学)
杉山 美緒(早稲田大学)

コンセプト

 谷中銀座は下町の心地良さを感じることができる商店街であり、近年注目され観光客が増加しつつある。この商店街では観光客とお店の人同士の交流はあるが、これらの人と地域の人との交流の機会はほとんどない。また、商店街という場はフードロスが発生しやすい場所である。ここで、食を通して観光客・商店街の人・地域の人の交流の機会を発生させ、さらに泊まるという行為を通して生活を共有することで、人と人とのより密接な交流を促進させる宿泊施設を提案する。この施設は商店街と住宅街をつなぐ「土間」になり、交わる機会が少なかった二つの地域にいる人に密接な交流を与える存在になる。商店街で発生しているフードロスの問題を、余った食材を販売するお店や、人々が共同で調理するキッチンなどの機能を宿が有することで解決し、人とのつながりを生むことで商店街が発展するというように、まちの単位で宿を媒介としたサイクルが生まれていく。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 商店街と住宅街の乖離という現状への提案として、両者をつなぐ路地、土間、それを含む建築の提案。建築構成は魅力的であったが、貫き土間が多少開放的すぎて、全体として商業建築的な印象が強く感じた。また、商店街と住宅街はむしろ乖離していたほうがよいのではないか?という疑問を、最後まで払拭することができなかった。

審査員 大西 麻貴

 谷中銀座と、奥の住宅街を路地で繋ぐことで、地域の拠点となる場の提案である。模型を覗き込むと、さまざまに居心地の良い場所が展開されているところが魅力的であった。ただ、フードロス、路地、宿、など複数のテーマが盛り込まれる中で、どこに1番力を注いでいるのかというところが不明瞭になってしまったところがあった。路地を中心した宿、の可能性を中心に提案を展開していくとより良かったのではないかと思う。

審査員 百田 有希

 土間に着目し路地的な空間を建物の中にまで引き込もうとする試みが良いなと思った。それを模型を用いて空間的に検討しているのも好感を持った。一方で土間と宿とフードロスの関係が明解ではなく、土間と宿と地域との関係に絞って案を発展しても良かったのではないかと思う。

審査員 白井 克芳

 宿は旅行者に非日常の全サービスを提供するのが一般的概念と思います。そんな中フードロスといった社会問題に対し、解決に向けた目的をどのように共有するかといった課題感はありますが、貫き土間のハードが完成しソフト面も備わった状態を創造すると、そこは旅行者と住民のふれあい機会の場となるばかりか、訪問回数が増え関係性が深まれば深まるほど、また来たくなり共有したくなる宿が見えてくる興味深い提案です。

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