第7回 受賞作品

優秀賞

Para-site ―太っ腹な家―

井戸 航太郎(大阪大学大学院)
山本 翔也(大阪大学大学院)

コンセプト

 「雨宿り」という言葉があるように、宿とは暮らしのふとした瞬間に誰かに寄生される空間のことだ。かつて家は宿だった。時に寄生され、思いがけず暮らしが重なり共有される場所。人との繋がりが感じにくい今、そんな太っ腹な家が必要だと考えた。階段・窓枠・カーテン・台所の4つの住まいの要素を、その場所に残したまま家を減築し、それらを大きくすることで住空間を再構成した。すると、内に閉じていた暮らしの一部が外に対して開かれる。そこは自分の家の中で過ごすように感じられながらも、誰かが勝手に借りて居場所をつくってしまう場所である。時に暮らしが重なり合うそんな太っ腹な空間は、いつか寄生されることが楽しみになり、自分の暮らしを共有したくなる場所となる。この家は軒のない新興住宅街に建つ。このまちで、人々が互いに寄生し合うことで、いくつもの暮らしが重なり、共有される光景が広がっていくと嬉しい。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 模型をしっかり作っていて、たいへん好感を持った。プレゼンテーションの冒頭で提示した、近世日本における寺前の雨宿りの風景が美しく、想像力をかき立てられるもので、それに比べると提案は多少ハコ的というか、ハウスメーカー的な標準志向が感じられ、寺前の雨宿りの風景がもつおおらかな世界を上回れなかった印象がある。

審査員 大西 麻貴

 かつて家そのものに宿の機能があったことに着目し、軒先を人に貸し出すことができる、おおらかな家の提案である。宿の起源に遡り、家のあり方の可能性を広げていこうとする姿勢が評価された。ただ、提案された家は魅力的でありつつも、宿という言葉を介さなくても設計可能な家となっており、家を宿と捉える視点からもっとストレートに、豊かな家の可能性を広げてほしかったと感じた。

審査員 百田 有希

 かつて家が宿でもあったことに着目し、家を地域や周辺環境にひらいていこうとする姿勢に共感した。ひらいた部分がもっと川の土手の一部のようであったり、周辺地域の一部であったり、またひらいたことによって私的空間での住まい方そのものも変化していくような、従来の「家」の枠を押し広げるような提案になっていると良いと思った。

審査員 白井 克芳

 建売が並ぶ新興住宅街、プライベートとパブリックスペースの境界の明確化が時に隣人とのコミュニケーションを遠ざける理由にもなりうるが、GLからGL+2000にまたがる寄生をも許容した太っ腹な家が通りに面していることで、階段上下のパブリックスペースは正に住宅街のコミュニティの核として機能し、地域全体を活性化させ共有がうれしくなる作品です。この切り口はすたれていく地域の減築機会にも生かせる提案です。

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