第7回 受賞作品

最優秀賞

稲穂のしおり

飯田 夢(法政大学大学院)
松永 賢太(法政大学)

コンセプト

 グリーンツーリズムのように現代では都市と農村において体験を共有することか多く見られる。棚田のような手仕事と暮らしが密接な農業は、さまざまな道具を用い、知識や技術を持つ。道具を保管するtool shedはその人の知識や経験の貯蓄庫である。私は、tool shedのくらしに密接に結びついた在り方に着目し、教え学び合う過程とその土地に根付いたふるまいや感性を媒介として、都市と農村、移住者と住民が共有する時間と空間を”knowledge shed”と定義した。knowledge shedは歩く中で、出会う人やモノ、経験や感性を共有したくなる空間となる。その土地のヒト・モノ・コトに根付き、その先まで創造す空間を宿と定義し、斜面地のウォークスルーによる立体knowledge shedを計画した。人と人の様々な経験の共有から都市と農村をゆるやかに紡いでゆく未来を想像する。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 棚田の只中に立ち上がる建築の提案で、建築が持つ立体的な姿、その力強さにひかれた。図面も模型も建築の楽しさ・面白さを克明に描いており、共感した。いろいろと文句を言いはしたが、それらはすべて、私ならこうする、もっとよくなる、というような意味の、要するにこの案に共感していることの裏返しなのだろうと思う。

審査員 大西 麻貴

 今回のテーマ「共有する宿」に対して、どのように掘り下げ、その可能性を広げていけるかが問われる中で、2人の提案は、宿を人間だけでなくモノや人々の知恵も宿ることのできる場所と捉え、knowledge shedとしての建築を提案したところが魅力的だった。模型も迫力があり、内部を覗くとさまざまな居場所があって、魅力的な空間が提案されていた。実際の敷地をより深くリサーチし、敷地にあった佇まいや、在り方まで踏み込めるとより素晴らしい提案になったと感じる。

審査員 百田 有希

 「共有する宿」というテーマに対して、宿泊の場をはじめに考えるのではなく、棚田をいかに引き継ぎ残すのかという社会課題を、だれもが共有したくなるものに変えていこうとする姿勢に共感した。また地形に応答するようにつくられた模型も素晴らしかった。たくさんの段差があったがスロープを使う方が合理的かつランドスケープと一体となり、棚田の特性と合うのではないかと思った。

審査員 白井 克芳

 2021年3月、東京一極集中や少子高齢化対策、空き家問題や地域活性化対応策として全国二地域居住等促進協議会が設立され、デュアルライフへの取組が本格化しています。この提案は余暇や自由時間を楽しむ別荘とは一線を画したデュアルライフ実現に向けた高い可能性を秘めています。切り口とした人やモノ、経験や感性をknowledge shedとして積上げていくことでデュアルライフへの可能性が広がり、抱えている様々な課題解決に繋がっていく素晴らしい作品です。

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