第6回 受賞作品

優秀賞

暮らしの商店坂

坪井 悠里子(横浜国立大学大学院)
東野 有希(横浜国立大学大学院)
亀井 美里(横浜国立大学大学院)

コンセプト

 かつての商店街は道に集まる小さな商業がコミュニティをつくっていた。商店の裏には暮らしがあり、暮らしの振る舞いの受け皿である道や軒先といった中間領域が地域コミュニティの居場所であった。しかし今の商業空間は購買の場として効率化が図られ大型化し、コミュニティの居場所が失われた。商店街コミュニティの居場所である中間領域の新しいあり方を考える。敷地は横浜市中区の代官坂である。小さな商店と住宅が入り交じる坂に地域住民の居場所を編み込んでいき、これらの空間が織り混ざる新たな商店街をつくる。商店街の核である道(坂)を立体的に膨らませたり引き延ばしたりしてできる半屋外の中間領域や、坂のレベル差によって生まれる心地よい距離感がずっと居たくなる空間を生み出す。住民が日々上り下りする坂を商店街にすることで、坂中心のスモールコミュニティが浮かび上がる。地形のまとまりとともにある商店街がこれからのコミュニティつくる。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 谷の形を利用して、共同体の場所を作りだす提案である。図面の上手さが魅力と思っていたら、模型がさらに別世界の魅力を持っており、感心した。谷という地形がもつ立体性をいかんなく活用して物語的世界を作り出しているところに秀逸さを感じた。もっともっと面白くなる案だと思う。

審査員 大西 麻貴

 坂道を中心に、両側にそびえる山までを含んだ大きな模型を作ったことがとても良かった。商店街が一つの道だけでなく、その周りの環境までをも含んだ一つの世界として存在していることを、その模型の作り方が伝えていた。提案そのものも、坂道の傾斜やカーブを生かしてさまざまな居場所を作っているところが魅力的だったが、敷地全体の迫力に対して、建築の提案が少し部分的すぎるように感じられ、より敷地全体を空間的に捉える提案になっていると良かったと思う。

審査員 百田 有希

 地形を利用して地域住民の集まる場所をつくっているのが魅力的な提案だと感じた。やや商店街ではなくて、文化や福祉のコミュニティの場でもよいのではないかという感じがしたのが気になったが、地形を建築的に読み解いているのは良いなと思った。谷全体を感じさせるまちのあり方について審査の過程で議論になったが、この提案が持っている可能性がどんどん広がっていくのを感じた。

審査員 白井 克芳

 坂がくねっていることで視野が制限され進むにつれて新たな発見が生まれる。また高低差により見る方角で景色が変わる。くねった坂と両サイドの丘、コミュニティを産むデザインされた空間の広がりが勝手に頭で描き出され、ゆっくりした時間の昧わいから急に心が踊らさる空間へと導いてくれる、そんな楽しい時間を過ごさせてくれそうである。

  • Facebook
  • Instagram
  • Twitter
ページトップへ