第6回 受賞作品

優秀賞

商家街 −商い家する街−(あきやがいーあきないかするまち−)

海老原 耀(早稲田大学大学院)

コンセプト

 ぼくの家が商店街。自分の家や街が商店街のように変わっていったらそこはみんなの家のような「商家街」になっていく。在宅時間の増加から家で過ごす趣味時間が増え、続いてそこに「小商い」が生まれるように家を新しいカタチへとリ・デザインすることが必要となる。根津−上野をつなぐ住宅街は古民家を残しながらツギハギに増改減築してきた痕跡が見られる。しかし、空き家があり持続可能な地域コミュニティと経済システムが必要である。そこで3つの核によりつなぐ「商家街」を提案する。空き家状態に近く、空き地に面し、また主機能がそれぞれ製作所・学習塾・アパートメントであった3つを核として商き家へと増改減築する。設計言語として「上野根津エレメント」を抽出し、増改減築してきた痕跡を分析、上野根津らしさによりリノベーション手法をいくつかに分類しリ・デザインする。やがて、3つの核を軸に各々が増改減築をし、住宅街は商家街になっていく。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 小商というアイデアひとつで、住宅地全体が一種の商店街に変容していくところがたいへん鮮やかで、たとえハード的に何ひとつ変えなかったとしても、街全体が変わってしまうようなダイナミックな提案だと感じた。一方で、いくつかのハード的提案のほうはいまひとつというか、もう少しアイデアにふさわしいありかたがあるようにも感じた。

審査員 大西 麻貴

 根津と上野をつなぐ住宅街において、それぞれの家の一部を小商いの場へと改修できる方法を提示し、誰もが自分達の力で住宅を商店へと変えていけるようにすることで、住宅街全体が商いのある街へと徐々に変わっていくという提案。商いが生まれると、人と人とのコミュニケーションが生まれ、閉じられた住宅街が街と応答するまちへと進化していく。その視点の面白さ、誰もが参加できる開かれた仕組みであることに、審査員皆が魅力を感じた。最優秀の候補となり、最終的には優秀賞となったが、商店街をテーマとした今回のコンペの中で、視点の面白さが際立った作品であった。

審査員 百田 有希

 家の中に小商いができる場所をつくっていくことで、住宅街全体が商家街になるという面白い提案。リモートワークや趣味を副業にする働き方など、働くことと暮らすことの隔たりが小さくなってきている時代に対して、ひとつの新しい暮らし方を提示していると感じた。その考えがもう少し、新しい家の「型」として魅力的に提示されているとさらに良かったと思う。

審査員 白井 克芳

 目まぐるしく移り変わる時代で日本が抱える構造的課題を解決する最も近道で重要性が高い手段は、社会も人も「自立」であると言われています。小商いできる空間にリ・デザイン した「自立」の第一歩は、小さな集いからやがて地域コミュニティ「商家街」を形成していくでしょう。その過程が無理なく無駄なく、とても共感を覚えます。

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