第6回 受賞作品

優秀賞

きっかけを創る「間」

佐藤 奈々惠(早稲田大学)
近藤 樹生(早稲田大学)
杉山 太一(早稲田大学)

コンセプト

 幼稚園の頃から15年間も住んできた大好きな街、西荻窪。戦後の都市再生により著しく変化した吉祥寺や荻窪の「狭間」にある西荻窪には、大型商業施設がなく、ヒューマンスケールで魅力のある街並みが残り続けている。しかしアートとカルチャーの街という個性的なアイデンティティーを持つ一方で、小規模経営の店舗が点在しているため店や人同士の関係性が希薄になっている。私たちはフィールドサーベイをもとに、西荻窪の魅力を引き立てる重要な要素が「間(ま)」であると仮説を立てた。現在この街に散らばっている「間」をかき集め新たな商店街の中にデザインすることで、人々や動植物が「ずっといたくなる商店街」を作り出す。住民や店の個性が「間」を介して滲み出て、コミュニケーションのきっかけを創る。西荻特有の「間」は残りつつも、時とともに徐々に変化していくことでずっといても飽きない、生活の一部になるような商店街を提案する。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 まっすぐな商店街でなく、形を屈曲させたり幅を変えたりして小さな居場所をつくり、各所に居場所を作ってゆく提案である。商店街のようでもあり、住宅街のようでもあり、その両方に見えるところに魅力を感じた。建築とその隙間、道路が一体のものとして計画されているところも、ひとの居場所づくりという意味で的確なアプローチと感じた。

審査員 大西 麻貴

 西荻窪のまちに、人びとの居場所となる「間」を内包する新しい商店街を作る提案。ボリューム同士の隙間や壁の凹み、見えがくれする空間体験が、魅力的な居場所を作っていたところがとても良かった。大きな模型がその魅力をよく伝えていたが、全てが新築であること、建物が妻入りであることなど、既存の街との連続性が少し薄いように感じられた。既存建物も少し残しながら、新築の提案が入り込んできて、全体として今よりも人の居場所がたくさんある街になっていくと、より街とつながった提案になったように思う。

審査員 百田 有希

 通りに対して様々なくぼみを設けることで、動線空間自体が人の居場所になる提案。店の連なりのようであり、家の連なりのようでもある不思議な建ち方が魅力的。2階の店は友達の家に来たようなより親密な空間に感じる。提案では住むことは想定されていなかったが、この計画であれば、住むことと商いが新しい特別な関係を結び、「ずっといたくなる商店街」に相応しいものになり得るなと感じた。

審査員 白井 克芳

 建物同土を引き立てる「間」は自然に「人の心の間」をデザインし、協調や連携を産み出していく。それがまた見える形で「機能する間」となって商店街の魅力を創っていく。
 「間」は年代やそこに住まう世代が変わろうとも自由に変化し人に魅力を与え続け、「すっといたくなる商店街」も形を変えながら存続し続ける、そんな想像が勝手に頭の中で膨らんでいく素晴らしい人間味あふれた作品。

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