第6回 受賞作品

最優秀賞

迷子になっていい街

菊地 佑磨(東京藝術大学大学院)

コンセプト

 認知症は超高齢社会の日本が抱える社会問題の一つです。認知症が原因で自宅に戻れなくなり、行方不明になることや交通事故に巻き込まれることがあり、認知症介護では自由に外出するのを止めさせることが一般的です。しかし、人はたとえ認知症になっても、それまでと同じように街での生活を送りたいはずだと考えます。認知症の人ができるだけ自由に外出できるように、街を危険から守られた場所につくり変えれば、彼らの想いと地域との折り合いがつけられ、認知症の人が「迷子になっていい街」ができるのではないかと考えました。そこで、衰退化しつつあるシャッター街を認知症の人が自由に歩ける街へ更新することを提案します。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 認知症をはじめとして、さまざまな困難を抱える人を街全体で支えるという案で、施設の提案ではなく、アーケード付き商店街を利用するという発想の面白さに惹かれた。理想主義的でもありまた現実主義的でもあり、その両方を兼ね備えた視野の確かさを感じる。

審査員 大西 麻貴

 認知症の方々を施設に閉じ込めるのでなく、商店街そのものを認知症の人が暮らす街と捉え、買い物をしたり散歩をしたり、街の人々に見守られながら、生きがいを持って暮らせる環境を生み出す提案。「迷子になっていい」という言葉から感じられるように、提案全体に社会に対する眼差しの優しさと批評性があると同時に、本当にこうなったらいいなと感じさせる力のある提案だった。提案された建築空間が少し閉じられていて、既存の施設と似通っているように感じられたので、もう少し街全体で生きるというテーマとつながったものとなっているとより素晴らしいと感じた。

審査員 百田 有希

 社会が抱える問題に対して、誰しもが「こうあったらいいな」と素直に思える提案で素晴らしいと感じた。タイトルの付け方も、認知症の方をやさしくまちが受け止めるような、包摂的な感じがして良いなと思った。ただ少し建築の提案がシステム的なのが気になった。人間が人生の最後を過ごすにふさわしい、居心地の良い空間になっているとより素晴らしい提案になったと思う。

審査員 白井 克芳

 人口減少の中日本が抱える高齢化問題、中でも最たる課題「認知症」を切り口に身近な町全体のコミュニティで解決していくモデルを「すっといたくなる商店街」としてプレゼンいただいた発想に感嘆を覚えます。また街に現存するいろいろなサービスを提供する機能とユニットを組み実現していくアプローチも現実昧があり、期待が膨らみます。

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