第5回 学生建築デザインコンペ受賞作品

三協アルミ賞

まちを奏でる七百三のいろは音 ―旧参拝路を舞台としたオノマトペの情景詩―

生田 海斗(京都工芸繊維大学大学院)
吉本 大樹(近畿大学大学院)

コンセプト

 現代の生活に耳を澄ますと、まちの雑多と自宅での孤独な生活という大きな音のコントラストが存在していると感じた。土地へ帰属するような音域はもっと緩やかで、生活音や虫の声などが共鳴するような音のスケールではないだろうか。この音と生活の身体表現として、日本には703語ものオノマトペが存在し、豊富な身体感覚を私達は持っている。そこで、この703語のオノマトペからふるさとの音景を考える。
敷地は広島市江波地区にある旧参道である。宅地造成後、廃れた一本の小さな旧参道を歩きながら、まちの音域をオノマトペの形で書きだし、このオノマトペを元にプログラムから空間・建材を、まちの音域を重ね拡げる形態として組み込んだ。具体的には、音を拡散する円型の基本形を元に、地形や細やかな人の振る舞いを横断していくLDKの建築を設計した。この日常を増幅する「いろは」の建築が、どこか懐かしい大らかな住まいの音景を描き出す。

講評(敬称略)

審査員 白井 克芳

 これからはモノからコト消費への流れがますます加速する時代です。この作品は至極単純ではありますが、その土地に存在する自然の音環境とその環境下で生活する人々との関係を背伸びせず最適化しようとする「サウンドスケープデザイン」をストレートに表現しています。そして建材提案では敬遠されがちな金属音を発するアルミを屋根として使うという、一見「オノマトペ」効果を台無しにしてしまいかねない提案ですが、樹脂とのハイブリット構造で中空形状を持たせた「ふわふわ屋根」は、形や反響音など想像をはるかに超える効果を抱かせてくれるものであると評価しました。

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