第5回 学生建築デザインコンペ受賞作品

特別賞

ふるさとを蓄積する分級小学校

渡辺 拓海(近畿大学大学院)
甲斐 遥也(近畿大学)
力安 一樹(近畿大学)

コンセプト

 「ふるさと」を考えてみる。自宅、小学校、駅…。これらは「昔」を思い出すけど「ふるさと」って感じじゃない。隠れて遊んだ駐車場とかみんなで作った高架下の秘密基地の方がより、自分と親密な懐かしさを感じる。そこで時間を過ごしたいと思える。これこそが「ずっといたくなるふるさと」なんじゃないだろうか。人が過ごす時間と特別な場所の記憶を同一に蓄積すると、それは「ふるさと」になる。なら、学童期の多くの時間を過ごす小学校が「ふるさと」になればどれだけ尊いだろうか。小学校を(低/中/高)学年それぞれの発達段階特徴とそれに適した街の特異なエリア/場所をリンクさせた三つの学童園。まちの(大地/人/環境)の中で子どもの時間を蓄積する「ずっといたくなるふるさと」を提案します。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 小学校などの子供の場所を地域の核に置くという提案で、子供を媒介して地域がつながってゆく情景が目に浮かび、たいへん共感した。子供の成長過程に合わせて三つの建築を提案しているが、その三つが似ており、形はカーブしてはいるものの箱物建築のイメージが出てしまったかもしれない。しかし、やりたい建築の形のイメージが明確にあることは、この作品に勢いと明るさを与えているように感じられた。

審査員 トム・ヘネガン

The designers suggested that a ‘Furusato’ relates to your memories of the times and the places that you spent with your friends when you were young. A ‘Furusato’ is a memory of an event - it is not necessarily a place. For that reason, they divided the primary school into 3 parts. Each of the three parts will have a different relationship with nature and time. For example, one part of the school will be most aware of the sights and sounds of the harvest, and another part will be most closely related to the annual ‘Matsuri’. In this design, the school and the teaching is integrated together.

審査員 大西 麻貴

 自分自身がふるさとらしさを感じる場所は、学校や駅といった施設というよりは、ちょっとした道端や隠れられる場所なのだというアイディアはとてもよかった。そのアイディアを小学校の設計に置き換えていくときには、もっとこれまでの小学校とは違う、より周りの環境と特別な関係を結ぶ設計になるべきだと思う。

審査員 百田 有希

 「ずっといたくなるふるさと」というテーマに対して、小学校を取り上げたことが良いと思った。小学生というのは、自分の置かれた環境を素直に自分自身の一部として吸収できる時期なのかもしれない。誰もが瑞々しいその時期に、学ぶということが、地域と共にあったり周囲の環境と共にある小学校というのは、1つの建築でも、地域全体への愛着を育むことができるものになり得るかもしれないと思った。

審査員 白井 克芳

 ふるさとを「過ごす時間と特別な場所の記憶を同一に蓄積すること」と定義し、五感や知識、考え方など子供の成長に合わせて手助けする環境、キャンパスを準備するという発想が、とてもわかりやすく、納得感が得られるプレゼンでした。またこの地域の文化,慣習,習慣を守る対策として、そして大きくはなかなか進まない地方分散政策にも通じるものとしてとても興味深く、次世代の低炭素化社会実現の基本コンセプトになるのではと連想させる興味深い提案です。

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