第5回 学生建築デザインコンペ受賞作品

優秀賞

都会のふるさと みちの遊び場

川口 豊夢(早稲田大学大学院)

コンセプト

 「ふるさと」というと自然の中のふるさとや田舎のふるさとなどを思い浮かべる人も多いだろうが、都会にだってふるさとだと思える場所はある。子供の頃は袋小路の道や路地などで遊んだ。都会の方がそういった道が多いだろう。そんな道での遊びの記憶が都会のふるさとを思い起こさせる。
ふるさとだと思える道をつくるために、道での活動に彩りを与える建築や道路との境界の編集を行う装置を設計する。子供たちの遊び場だけでなく近隣住民が集まって様々な活動を行うことで、この道に行けば誰かに会える、この道にいれば何か新しいことに出会える。そんな道をこの道の拠点となる建築とともに設計する。
この道でのアクティビティを活性化させる拠点となる「倉庫」「保育園」「集会所」「路地裏広場」の施設を設計することで道を介した故郷の風景をつくり出す。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 ふるさととして道を提案した作品で、そのアイデアやプレゼンテーションのシンプルさと明快さには、たいへん共感した。また、道を描く画法も面白く感じた。多目的化する道は、過去のものでもあるが、未来のものでもある。その意味では、歩道と車道に分かれる現在の道を利用した仮設的計画ではなく、ベストの仕上げと形、空間を持った理想の道を提案してほしかった。

審査員 トム・ヘネガン

The designer has made interesting proposals about an ordinary street in and ordinary town. It is a town that has no special public spaces, but the designer transforms the town by stoping the movement of vehicles on a wide street - making it possible for new buildings to open their face towards the street, and so that the ‘public space’ of the street expands into the old alleyways and back-streets and gardens. These gardens and alleyways will be where children will play, and which they will remember in their future. All of this is possible because the ‘street’ has been changed into a ‘shared public space’. 

審査員 大西 麻貴

 道は魅力的である。道が子供たちの遊び場になり、人々の出会いの場になり、それこそが街のアイデンティティになるというアイディアは素晴らしいと思った。建築を建てるために選んでいる敷地も、例えば角地や路地奥など、道と関係を持つ上でなるほどと思わせる場所を選んでいてよかった。ただ全体として提案がさびしい印象で、着眼点が素晴らしいだけに具体化していく上でもっと創造力を膨らませられるとよかったと思う。

審査員 百田 有希

 道に着目しているのはとても良いと思った。ただ道自体にみんな魅力をすでに感じているためどう具体的に考え、表現するのかということが重要だと思う。紅葉は美しい、と単に言っても詩にならないように。肝心な部分が虹色の靄で表現されていたのが残念だった。

審査員 白井 克芳

 今回の設定条件のような機能を失った建物や過去の賑わいをなくした通りは、日本中至るところに存在します。そんな建物,場所への活性化策としてとても有効と思いますし、ストック住宅問題への解消にも大きく貢献する低予算対策と思います。 「建物と道路との境界を編集する装置」という表現が、強いインパクトとともに心地よい感じがします。また設定した拠点一つ一つの建物に高い価値の再生提案が盛り込まれておりとても素晴らしい。

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