第5回 学生建築デザインコンペ受賞作品

特別賞

ふるさとのうつわ ―私の“ずっといたい”を地域と共有する―

堀田 翔平(信州大学大学院)
竹内 正彦(信州大学)

コンセプト

 ふるさとを離れた私が他人とふるさとの話をすると、観光スポットをふるさとの魅力としてあげてくる。しかし私は、観光スポットに“ずっといたい”とは思わない。それは、私が日常的に感じてきたふるさとの環境とは異なるからではないだろうか。
私が思う“ずっといたくなるふるさと”とは、ふるさとの静けさや明るさなど、ふるさとの環境的要素が感じられる場所である。そんなふるさとの環境を空間化することで、私自身が“ずっといたいふるさと”をつくる。そして、それらの空間を建築化するために、断面的に重なりと余白を設ける。重なりは地域の方々の交流を促し、余白には環境が入り込む。そうすることで地域の方に本当のふるさとを知ってもらえるような、“ずっといたくなるふるさと”を提案する。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 自身のふるさとから、ふるさと的なものを喚起する空間や情景を取り出してきて、それを建築に置き換えて、そのコンプレックスを提案した作品で、そのストレートな脱線(展開)ぶりに共感した。しかし他方で、立体的形状がよくわからず、一次審査のイメージ以上のものを二次審査において提示することができず、さらなる高評価は得られなかったのが残念だ。

審査員 トム・ヘネガン

This design is for a ‘shared house’ in which the memories of the residents will be stimulated by the curious forms and feelings of eleven rooms. Each of the rooms has an unusual aesthetic and a specific functional form. For example, a room with 4 roof-windows illuminates 4 plants. A room in which 2 people meet has the form of 2 benches and has 2 windows that illuminate the faces of the 2 people. The building forms function efficiently, but they have the character of ‘dreams’ in which memories, the present, and future ambitions all overlap. The ‘silhouettes’ of the rooms - outlined by the sunset behind - would make clear that this is a building of memories and dreams.

審査員 大西 麻貴

 ふるさとという形のないものを、そこからイメージされる小さな詩的な空間へと置き換えていく提案は他になく、魅力的だった。審査の中で、模型がなくて残念だというコメントがあったが、スケッチで描かれている魅力が、実際に模型という具体的なスケールをもつものになったときにどれだけ豊かなものになっているかが判断できなかったことが残念だった。

審査員 百田 有希

 ふるさとというテーマに対して空間的な提案で答えているところが良いなと思った。ふるさとというのが、ある個人が属していた地域や環境だとすると、提案されている特徴的な空間がある個人のものだけではなく、周囲の人や環境に対してどのような意味があるのか、どのような関係を結ぶのかを考えるともっと良くなったのではないかと思う。

審査員 白井 克芳

 「ふるさととは生まれ育った場所やなじみの場所」といういわゆる「別の場所にいて思うところ」という概念が一般的ですが、この作品は独特な図示表現の下、自分が住むどんなところでもずっといたくなる故郷を構成できると主張するとても興味深い作品です。故郷を環境的要素に分け、五感に心地よく訴求するように色々な要素を積上げ、様々な価値観を生みだす空間つくりは、多様化が益々進む社会においてとても可能性を感じるものです。
建築の厳格化が進む中ではありますが、使いやすさ過ごしやすさの追求と画一的にならない豊かな発想を今後も持ち続けていただきたいと思います。

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