最優秀賞 | 家から出ても、わたし、まだ はだし。 ―住居を繋ぐ、はだしの共有スペース― |
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イエのロジ | |
優秀賞 | 湯/塔のある暮らし |
マチイエ | |
特別賞 | ずっといたかった場所 |
匂いを紡ぐ土蔵 | |
Urban Mountain | |
三協アルミ賞 | 解体新処 [建材提案:熱で延びるアルミ建材] |
楠元 彩乃(横浜国立大学大学院)
敷地は長野県北部に位置する野沢温泉村。1000年の歴史を持つ野沢温泉には、麻釜(おがま)という100度近い温泉が湧出している源泉があり、ここでは地元の人が野沢菜や伝統工芸であるアケビの原料を茹でたり、洗濯をしたりする風景が今なお残っている。スキーを観光資源とした温泉地として名を馳せながらも、温泉の管理・運営を行う「湯仲間」と呼ばれる惣の存在が、野沢を独自の歴史を維持し続けるまちにしてきた。温泉を地域インフラとして捉え、麻釜の活動を拡張するため既存の地形をそのまま引き出すように建築を配置し、視点場となる塔を置く。水回りコアを担った塔には、温泉や、生活用水、足湯などの水がまわる。湯仲間のメンバーが住まいを持ちながら、観光客の宿としても機能し、自分たちで管理運営していく。麻釜を中心に生活が展開される村民の日常の暮らしと、ここを訪れた観光客の非日常が織り重なり、野沢の未来の風景となっていく。
温泉に着目した提案はいくつかあったが、その中でこの案がもっとも優れていた。源泉の麻釜のアイデアもさることながら、プレゼンテーション全体にある巧みさを感じた。提案した建築も、たいへんかわいらしいものだった。人が集まる麻釜と提案建築が単に隣り合っているだけで、つながりがあまり感じられなかったのが惜しい。塔も、悪くないアイデアとはいえ、湯に匹敵するほどのことなのかというハテナもあった。
温泉という、誰でも自然と心がほぐれる場を選び、生き生きとしたスケッチとともにずっといたくなる場を提案したところがよかった。また、数ある温泉の中から、麻釜という野沢温泉特有の、暮らしと温泉をつなげる仕組みを発見したところも説得力があった。スケッチを見ると、麻釜は階段状に連なり空間的にとても魅力のある場である。その横に建つ建築と麻釜とが、空間的にどのように関係し合っているのかがもっとわかると、よりよかったと思う。
「麻釜」を発見した敷地への嗅覚や、空間の魅力を伝えるスケッチの描写力、提案をまとめる構想力など力作だなと感じた。観光客を惹き付ける温泉と地域のコモンズとしての「麻釜」がもっと空間的に結びついていると良いなと思った。棚田状の麻釜が一部屋根の下に入り込んでいて雨の日にも作業が出来たり、アケビを茹でおわり休憩する地域の人たちと、湯上りの後くつろぐ観光客が集える空間が端的に実現されていると良いなと思った。
ビジュアルだけでそこに住まう人、訪れる人に楽しさを感じさせるそんな作品です。住まう人にとっては昔ながらの伝統・文化を重んじながらも訪れる人の行動や感嘆の声から生活の知恵のブラッシュアップやそこに住んでいることの満足感や充実感を向上させていく、そんな想像ができます。この作品を組み立てている中心は、地元生活そのものを象徴した塔であり、地形起伏の生かし方や見せ方はさすがです。更に背伸び表現ではなく等身大の価値を最大化していることに一番のうまさを感じます。