第4回 学生建築デザインコンペ受賞作品

最優秀賞

イエのロジ

小山内 祥多(東北大学大学院)

コンセプト

 “ずっといたくなる”を考えてみました。

 すると、まちでにぎわう飲食店に挟まれた小道や、神社に向かう静かな参道、町家が両脇に面した狭い道路が浮かび上がりました。これらのいわゆる”路地”が魅力的なのは、世界中どこにでもあって、その多くが未だ知らない場所だから。路地は面した建物の機能にも属さないし、車の交通量も少ないため、人の行動を縛ることもない。しかし、忙しい毎日を生きる私たちにとって、目的も無い場所で寄り道をする時間はありません。

 ずっといたいけど、そこは一過性の空間に過ぎない。

 だから住まいにロジを通します。そして、この世界にまたひとつ、新しい路地ができます。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 「ずっといたくなる」という言葉からそのまま住宅空間を発想するのでなく、路地空間に着目した点が面白い。人間の、または共同体の拠り所としての路地である。この路地空間を家に持ち込んで、家を豊かなものにするというアイデアがおもしろく、また、単にまっすぐの移動空間ではなく、あえて屈曲させたり、溜まり場を作って、滞在できる場所性を作り出そうとする意図も共感した。

審査員 大西 麻貴

 「ずっといたくなるすまい」を考える時に「家の中に路地のある家」を提案したところがよかった。また、路地が引き込まれた部分は2層吹き抜けになっていたり、水を使ってもよい土間になっていたりと、路地らしさとは何かということを、単にアイディアや平面計画の問題だけにせず、空間の質とともに捉えていこうとするところも評価された。敷地が月島ということだったので、もう少し月島の街に連続するような佇まい、路地のあり方を提案出来るとよりよかったと思う。

審査員 百田 有希

 家の中にまちの一部である路地が入り込んでいるのが面白い。「ずっといたくなる」というテーマに対して、住まいへの愛着が、路地を介することで自然とまちへつながっていくのがいいなと思った。路地は自分の家だけではなくて、隣家や大きな道ともつながっているのが魅力であるから、配置はもっと工夫が出来たのではないかなと思う。どちらかの路地が周囲の路地の延長であるとより魅力的になるのではないかと思った。

審査員 白井 克芳

 ロジには未知の世界へ導く魅力があり、それをプライベート空間であるイエの中を通す。そうすることでマチとイエ、パブリックとプライベート空間が織りなす新しい価値、風景がずっといたくなる魅力を創出するという通常では想像すらできない作品です。作品に触れる回を重ねるほど新しい発見があり、プレゼンでその奥深さを更に知り、模型で作者の情熱を感じるという最終選考に残して本当に良かったと思わせる傑作です。

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