第2回 学生デザインコンペ受賞作品

優秀賞

心地よい孤独

有光 史弥(熊本大学大学院)


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コンセプト

“ずっといたくなる場所”とはどういう場所だろうか。
 現代社会ではSNSなどにより多くの人とつながっている。それは物理的なつながりではなく、目に見えないつながりである。しかし、そのつながりを求め、人々はSNSに依存し、その中で生活している。そんな現代人にとって、ずっといたくなる場所とは、そんなSNSのようなつながりをもった空間なのではないだろうか。つまり、不特定多数に見られるSNSの中で、個人のアカウントを持ちながら存在しているように、「大勢」の中に存在していながらも、「個」というものを確立している状態が、気持ち良く、ずっといたくなる感情を抱くのではないだろうか。そんな“ずっといたくなる場所”を空間化することで、多くの人と群れながらも、個として存在する、独りの人間にとって心地よい、“ずっといたくなる場所”を計画する.

講評

審査員長 西沢 立衛 氏

 優秀賞となった「心地よい孤独」は、空間の構成方法、プレゼンテーション、いろんなところで巧みさを感じる案であった。理屈を考えて、そこから建築を説明する、というやり方も手慣れていて、コンペで鍛えられた巧みさを感じた。とくに、今回のコンペで問われた、地域との関係や、建具の提案、ずっといたくなる場所etcという本コンペ独自の問いかけとは懸け離れたところで案の魅力が作られているというところからも、本コンペ以外の他コンペであってもある程度通用しうる案だと感じた。

審査員 大西 麻貴 氏

 平面図を見てみると、確かに大小様々な魅力的な居場所が出来ていると感じさせられた。人にとって、みんなと一緒にわいわい楽しく過ごすだけでなく、一人の静かな時間を楽しんだり、目的がなくともいられる場所があることは大切なことだと思う。しかし、心地よい孤独、というタイトルが少し後ろ向きすぎると言うか、空間の素朴さやプレゼンテーションの柔らかさに対して、言葉が合致していない様に感じられた。また、パースの家具の置き方に、もっと空間を生み出して行くアイディアがあったら、より良かったと思う。

審査員 百田 有希 氏

 大勢でいても一人でいても「ずっといたくなる場所」を同時につくり出そうという試みに共感した。平面をフラクタルに多角形分割し、さまざまな大きさの場所を生み出しているし、開口部の操作で各部屋のつながりを考えている。ただ均質でダイアグラム的に見えるのが気になった。開口部もガラスが入っている開口や、見えるけど通れない開口など、様々な種類があるはずで、それによってどのような場所が生まれるか、どのようなルートで体験されるのか、隣接する部屋同士がどのような関係を結ぶのかがもっと伝わってくると良かったと思う。

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