第3回 学生デザインコンペ受賞作品

特別賞

積み重なる街の記憶を楽しむこと

浦田 友博(京都工芸繊維大学大学院)


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コンセプト

“ずっといたくなる”とは、この街だけが持っている歴史や記憶を楽しみながら暮らすこと。

大阪・岸和田の街には、江戸時代の堀跡を中心として、現代までに積み重なった歴史の痕跡が多く残っている。生活の中でそんな街の個性に気づくことができれば、この街をもっと楽しく過ごすことができるのではないだろうか。そこで、堀跡を現代の人々のための空間として再び利用することで、この街の魅力を再認識させようと思う。街を歩くと、岸和田の街並を楽しみながら、都市の断片的なシーンが連続する。その軌跡に、岸和田の都市構造が浮かび上がる。ある日散歩をすると、今まで気づかなかった風景を見つけた。駅前で電車を待っていると、ここはおもしろい街やで、と地元のおばさんが教えてくれた。そんな楽しみが積み重なればきっと、この街にずっといたくなる。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 大阪岸和田を舞台に、石垣発掘と地域施設の提案とが一体となった案である。「ずっといたくなるまち」というテーマを歴史につなげた鋭さが評価された。また、現実の石垣の配置を前提に具体的な空間提案にまとめたのもよかった。他方で、徐々に物事が明らかになってゆく「発掘」という、歴史との出会いの方法をとったわりには、空間と機能がピッタリあってしまうところに多少の都合の良さというか、現代性を感じた。

審査員 大西 麻貴

 街を掘ると、かつての堀の石垣が現れてくる、というところに驚きがあり、過去と今をつなげる面白い街の発見の方法だと感じた。掘り出される空間の形や深さが、割り当てた機能に対してあまりにうまくフィットしすぎているところに違和感があるというか、もう少しかつての街を掘り出して行くというダイナミックさがそのまま建築の面白さにつながるような提案になっていたらもっとよかったと思う。

審査員 百田 有希

 掘ることを通して、街の歴史が発掘され現在とつながるところが面白いと思った。ただ提案が石垣を壁やランドスケープとして利用したものに留まっているのが少し物足りなかった。例えばこれから建築を建てるとしたら石垣に新たに加わる地層の一つとして考えるとどうなるのだろうかとか、街の中に突如として石垣が出現することによって、石垣が全く違った存在に見えてきたり、既存の町の建物の見え方が変化していくような提案だと良かったと思う。

審査員 白井 克芳

 江戸時代の都市構造を形作っていた堀跡に着目し、その土地を未来に向かって時代に即した形でパブリック空間として再生していく本提案は、住まう人が歴史と誇りを感じ、更に訪れる人にはわくわく感を抱かせ、全体的にアクティビティを高めていくとても良い提案です。

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