犬の快適さや安全に配慮した、愛犬と一緒にくつろげるカフェが、ここ数年で注目を集めています。今回はドッグランを併設しているドッグカフェ「Dag」のオーナー尾関様に、店舗づくりの工夫や設備面のこだわり、ペットと飼い主が安心して過ごせる空間について伺いました。
少子高齢化やライフスタイルの変化を背景に、ペットを家族の一員とする意識が高まりつつあります。「ペットは家で留守番」から「一緒にお出かけ」が当たり前になった今、特に犬との暮らしにおいては、休日に愛犬を連れて過ごしたいという人が増えており、飼い主と犬がともに心地よく過ごせる施設の需要が高まっています。
「『Dag』では、ペットを一緒に過ごす家族として迎える飼い主の気持ちに寄り添い、設計段階から“犬目線”を大切にしています」と尾関様。
安心・安全を保つ工夫を重ねているそうです。
「『Dag』では、犬も飼い主も安心して過ごせるよう、細やかな空間設計をしています。まず、カフェの入り口には、ゆるやかなスロープを設置して段差を解消しました。つまずいたり、転んだりするリスクを減らし、バギーでもスムーズに出入りできるようにしています」と尾関様。
店内は入り口からテラス席まで高低差のない設計がされています。リードフックはテーブルごとに設置されているので、犬の急な飛び出しや他のお客さんとの接触を防げるほか、飼い主は手を離して食事ができて、犬同士のトラブルも起こりにくく安心です。
カフェへの入口は複数設けてあり、動線を分けることで、犬同士の不意な接触によるトラブルを避けられるようになっています。また、テーブルは座ったときに他の利用客と視線が合わないよう配置し、パーティションで視界を調整しています。視界を適度に遮ることで、他の犬や人が見えにくくなるため刺激が減り、犬が興奮したり吠えたりするリスクを軽減しトラブルを防ぎます。
外への出入りで段差が気になる場合には、あとから人工木デッキを設置することで段差をなくすことができ、より使いやすく整えることができます。
「犬にとってすべりにくい床材は足腰への負担を軽減します。『Dag』の床材はコンクリートなので夏でも比較的熱を持ちにくく、犬が心地よく感じるようです。掃除もしやすいんですよ」と尾関様。室内の壁には消臭剤入りの壁紙を使い、清潔で快適な空間づくりに努めているそうです。
屋外では、美しいグリーンで、お手入れも簡単な人工芝が便利です。天然芝よりも手がかからず、一年中きれいな状態を保てます。
愛犬と飼い主の双方が快適に過ごせる空間も「Dag」の魅力のひとつ。天候に左右されず利用できる屋根付きテラス席には、専用ドッグランを設け、犬を自由に遊ばせながら、飼い主がゆったり過ごせるようになっています。
店内がペット不可でも、オーニングやガーデンルームを活用したテラス席をペット可にすれば、お客さんの幅を広げられます。
また、ガーデンルームの扉を開閉すれば、空間を囲えるので、プライベートスペースや天候対策など、用途によって使い分けができます。
さらに腰壁やデザイン格子を設置したガーデンルームなら、座ったときも周りの視線を気にせず落ち着いて過ごせます。
ドッグランは、犬がリードを外して思いきり走れる場所ですが、大切なのは安全であることです。
「『Dag』では、逃走防止のために出入口扉を二重に設け、適切な高さと強度を保つフェンスを設置しています。外部の景色や視線はペットのストレスとなるので、視界を調整するために布で目隠しをしました。フェンスの高さは120pに設定して、コーナー部や下部のすき間にも配慮しています。地面材も犬の足にやさしい柔らかな人工芝を敷くことで、ケガを予防しているんですよ」と尾関様。
ドッグランスペースでは、広い敷地全体を囲うため、コストパフォーマンスの高いメッシュフェンスを使うと費用が比較的おさえられます。
「プールはプライバシーを守りつつも、外からお店の様子が感じられて楽しそうな雰囲気が伝わるよう、閉鎖的にならない工夫をしています」と尾関様。
小雨を防げるテラスから直接見守れることで、安心して犬を遊ばせられる点も好評だそう。雨天時や日差しの強い日でも、犬と飼い主が快適に過ごせるよう工夫されています。
採光パネルにすることで、高いフェンスで囲っても圧迫感がなく、明るい空間が生まれます。
愛犬と一緒に過ごす空間には、安心・安全と、快適性を両立した設計が求められます。また、季節や天候に左右されず利用でき、清潔を保つための環境づくりも重要です。「Dag」は犬のことを考えた動線設計と、飼い主への配慮が見事に調和したユニバーサルデザインで、多くの愛犬家に支持されています。大切な愛犬と「また来たい」と思わせる空間づくり、参考にしたいですね。