アルミの基礎知識

アルミの不思議

軽量 強度 耐食性 加工性 通電性 磁気を帯びない 熱伝導

低温に強い 反射性 無毒性 美しさ 鋳造性 再生度

はじめに

アルミニウムの製造が工業化されてから100年余り。鉄や銅が紀元前の昔から使用されてきたことからみれば、いかに新しい金属材料であるかがわかります。
アルミニウムは、そのすぐれた特性を生かして各分野に用途を広げ、現在では私たちの暮らしに身近なものとなり、産業分野でも欠くことのできない材料となりました。
アルミの不思議では、今後ますます大きく飛躍していこうとするアルミニウムの特性についてお知らせいたします。

1.軽量

軽い(イメージ) アルミニウムの比重は2.71。鉄(7.87)や銅(8.93)と比べると約3分の1です。軽量化による性能向上が時代のニーズになっている今日、特に自動車、鉄道車両、航空機、船舶などの輸送分野や建築・土木分野で、多くのアルミニウムが使われています。

2.強度

アルミニウムは比強度(単位重量あたりの強度)が大きいため、輸送機器や建築物などの構造材料として多く使用されています。 純アルミニウムの引張強さはあまり大きくありませんが、これにマグネシウム、マンガン、銅、けい素、亜鉛などを添加して合金にしたり、圧延などの加工や熱処理を施したりして、強度を高くすることができます。合金の種類、質別によって引張り強さは17〜60kg/mm2と変化させることができ、用途により適切な選択ができます。(高力アルミニウム合金の引張り強さは、銅の約1.45倍、普通鋼の1.37倍もあります。)最近では、リチウムを添加した低密度、高剛性の合金が開発され、航空機や大型構造物用の材料として注目されています。

強い(イメージ)

同じ質量(長さも同じ)の円柱片持梁に同一 荷重をかけた場合、密度が小さいほど直径が 大きくなるため断面係数が大きくなり、発生する最大応力、最大たわみは小さくなる。

●比強度
アルミ 5083-0 11.5
一般鋼 5.4
熱間圧延材 2.7

3. 耐食性

平均浸食深さの比較 アルミニウムは、空気中では緻密で安定な酸化皮膜を生成し、この皮膜が腐食を自然に防止します。 鉄鋼のように赤さびを生じることがないので、耐食性をさらに高め強度も兼ね備えたアルミ合金は、各種の用途に採用され、特に建築、自動車、船舶、海洋開発などの分野では、この特性が多いに生かされています。

4. 加工性

アルミニウムは塑性加工がしやすく、さまざまな形状に成形することができます。 たとえば、紙のように薄い箔や複雑な形状の押出形材を容易に製造することができることから、きわめて広い用途で使用されています。 また、できあがった製品素材をさらに成形加工したり、製品の表面などに精密加工を施したりすることも比較的容易です。また切削加工性にもすぐれ、金型などの工具類や機械部品に使われています。

5. 通電性

電気伝導の比較 アルミニウムは、導電体としてきわめて経済的な金属です。電気伝導率は銅の60%ですが比重が約3分の1なので、同じ重さの銅に比べて2倍の電流を通すことができます。 高電圧の送電線に採用される(鉄塔の間隔を広くすることができ、経済的)とともに、導体(板・管)などに広く使われており、エネルギー利用、エレクトロニクス分野での需要が大きく伸びています。

6. 磁気を帯びない

アルミニウムは非磁性体で、磁場に影響されません。 この特長はアルミニウムのほかの特性である軽い、耐食性にすぐれている、加工性がよい、などと組み合わせることによって、さまざまな製品に生かされています。 主な製品としては、パラボラアンテナ、船の磁気コンパスなどの計測機器、電子医療機器、メカトロニクス機器などが挙げられますが、さらにはリニアモーターカーや超伝導関連機器にいたるまで、その用途が大きく広がっています。

7.熱伝導

熱伝導の比較 アルミニウムの熱伝導率は鉄の約3倍(アルミニウム:180kcal/m・hr・℃、鉄:47kcal/m・hr・℃)。 熱をよく伝えるということは、急速に冷えるという性質にもなります。そのため、鍋や湯沸しなどの日用品、冷暖房装置、エンジン部品、各種の熱交換器、ソーラーコレクター、またビールやジュースなどの飲料缶にもこの特性が生かされています。 、さらにはリニアモーターカーや超伝導関連機器にいたるまで、その用途が大きく広がっています。

8.低温に強い

アルミニウムは鉄鋼などと違って液体窒素(−196℃)や液体酸素(−183℃)の極低温下でも脆性破壊がなく、靭性が大きいのが特長です。 低温プラントやLNG(−162℃)のタンク材として使われている上、最近では宇宙開発やバイオテクノロジー、極低温の超電導関連といった最先端分野でも、この特性が脚光を浴びています。普通鋼のように低温になると強度の低下を招くことはなく、逆に温度の低下によって強度が増すので、低温プラント装置にも用いられます。

9.反射性

よく磨いたアルミニウムは、赤外線や紫外線などの光線、ラジオやレーダーから発する電磁波、さらに各種熱線をよく反射します。 純度の高いアルミニウムほどこの性質はすぐれており、純度99.8%以上のアルミニウムは、放射エネルギーの90%以上を反射します。この特性を生かしたのが暖房器の反射板、照明器具、および宇宙服などで、最近ではアルミニウムに鏡面加工を施してこの特性をいっそう高め、ポリゴンミラーをはじめとした光エレクトロニクス製品にもよく使われています。

10.無毒性

アルミニウムは、無害・無臭で衛生的。万一なんらかの化学作用で金属が溶出したり、化合物を作ったとしても、重金属のように人体を害したり、土壌をいためたりしません。 この特性を生かして、食品や医薬品の包装、飲料缶、医療機器、家庭用器物などで広く使用されています。

11.美しさ

アルミニウムは、素地のままでも美しい金属ですが、陽極酸化皮膜処理(アルマイト処理)などさまざまな表面処理を施すことによってより美しくなり、また表面を硬くしたり、防食効果を高めたりすることができます。陽極酸化皮膜処理の際に自然発色や電解着色などによって、アルミニウムに多彩な色をつけることができ、建築外装や包装材などデザイン性が強く求められる分野に最適の材料です。

12.鋳造性

アルミニウムは融点が低い、溶けた状態でも表面が酸化皮膜で覆われガスを吸収しにくい、湯流れがよいといった性質を持っています。 このため薄肉の鋳物や複雑な形状の鋳物をつくることができます。 アルミ鋳造品はピストン、シリンダーブロック、ホイールなどの自動車部品、また各種産業機械部品など幅広い分野で使用されています。

13.再生度

アルミニウムは他の金属と比べると酸化しにくく、融点が低いため、使用後のアルミ製品を溶かして、簡単に再生することができます。 しかも、二次地金(再生地金)をつくるのに必要なエネルギーは、新地金をつくる場合と比べてわずか3%で済むと言われています。 また、品質的にも新地金とほとんど変わらないものが製造できるため、大変経済的な材料だと言えます。 特に飲料缶では、空き缶を回収し再資源化しようというリサイクル運動が全国各地で行われており、省資源・省エネルギーを果たすとともに、地球環境保護の推進にも大きな役割を担っています。このことは、今後ますます増加するアルミ需要に対する安定供給の大きな助けになります。

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