全国の被災地を訪れ、取材や支援ボランティアを行いながら防災活動に携わる奥村奈津美様に、地震や台風、水害、寒波といった災害ごとに知っておくべきことや、備えとなる空間づくりのポイントについてお伺いしました。
最初にしてほしいのは、お住まいのある地域のリスクについて知ることです。
災害が起きるとどのような被害が出るのかをハザードマップなどで確認しておきましょう。簡単に防災診断ができるサービスもありますのでチェックしてみてください。
家の外へすぐに避難できるような空間になっていますか?
地震の揺れに伴う火災、津波、土砂災害などの複合災害が危惧されます。ドアが開かなくなってしまったら脱出経路が確保できません。自分の腰の高さよりも背の高い家具や家電を設置する場合は、転倒防止グッズでしっかりと固定すること。そうすることで、自分のところに飛んできて怪我をしたり、下敷きになるリスクも低減できるでしょう。
扉のない家具だと食器などが飛散し、ガラスを踏んで怪我をする恐れもあります。避難を遅らせる要因になり、在宅避難も難しくなるので、耐震ロックの付いた家具などであらかじめ備えておきましょう。
家の中で安全に過ごせることと、家の外へ安全に逃げられること。この両面から地震への備えを考える必要があります。
家が地震の揺れでどのような影響を受けるのかは築年数や構造によっても異なります。自宅の耐震基準や工法を確認した上で、適切な対策が必要です。
家全体を安全にすることが難しい場合は、一室を耐震仕様にする方法も考えられます。強度のある耐震テーブルや耐震ベッドを備えておけば、とっさにもぐり込むことで、身を守ることができます。
火災が起きたら初期消火が肝心。感震ブレーカーや消火器を備えておくことも有効です。
外構ではブロック塀の倒壊リスクが高まります。あらかじめフェンスなどに改修しておくことをおすすめします。多くの自治体で「ブロック塀等の撤去に関する助成」を行っているので、お住まいにブロック塀がある場合は一度ご確認ください。
ご存じですか?実は、窓を守ることが、家を守ることにつながること。
家の屋根が飛ばされた様子を目にすることがありますが、窓ガラスが割れて家の中に強風が吹き込むと、吹き上げる力で屋根が吹き飛ばされてしまうのです。
窓ガラスを強風や飛来物から守るためには、シャッターや雨戸を取り付けましょう。
ガラス飛散防止フィルムは地震への備えにもなるので、普段から貼っておくといいですね。最近はUVカットや断熱などの機能を兼ねたアイテムが選べますよ。
台風は事前にある程度予測ができる災害です。予測できる災害だからこそ、在宅避難や広域避難などでどういう行動をとればいいのかを前もって理解しておきましょう。
お住まいの地域をハザードマップでチェックしてみてください。
もし浸水深が床下から床上くらいであれば、止水板を使って家の中への浸水を防ぐことも対策の1つ。
もう1つは、下水道などの施設の排水能力を超える雨が降った時や、河川の水位が高くなって雨水が排水できなくなった時に起きる内水氾濫への対策です。
トイレや排水口などから水が逆流して家が浸水する懸念があります。これを防ぐためにすべての排水口に「水のう」を設置することをおすすめします。「水のう」はゴミ袋を2枚重ねて、持ち運べる程度の水を入れて口を結ぶだけで簡単につくれます。
まずはこうした備えを行った上で、より大きな災害に対しては早めの避難を心がけてほしいですね。
例年、冬の気温がそこまで低くならない地域では、寒波で水道管が凍ったり破裂してしまう事故がたびたび発生すると聞きます。蛇口や水道管など外気に触れる部分を守る断熱材の役割を果たすアイテムを備えておくなどの対策も有効ではないでしょうか。
お住まいの地域によっては、積雪対策は家を建てる時点ですでに済んでいると思います。気をつけたいのは「停電」です。オール電化の家も多くなっていますが、停電に備えて石油ストーブやガスストーブなどの電気がなくても部屋を温められるアイテムを用意しておきたいですね。
北海道に在住するフォロワーさんによると、停電でトイレの便座が氷のように冷たくなり、「便座カバーがあればよかった」とのこと。何事も備えておくに越したことはありません。
「こうすれば絶対に大丈夫」という正解はありません。少しでも安全・安心につながる空間づくりを心がけたいものです。