「家庭菜園を始めてみたいけど、何から始めればいいかわからない」「何を育てればいいのかわからない」そんな家庭菜園初心者に向けて、育てやすい野菜・果物や、栽培の始め方、育て方のコツを宮崎大輔様にお伺いしました。
家庭菜園を始めるのに良い季節は主に春か秋です。野菜は温暖な気候を好むものが多いので、春にスタートして夏から秋に収穫できる野菜から始めるのがおすすめです。
〈主な作物〉
ミニトマト、ナス、ピーマン、キュウリ、ゴーヤ、大玉トマト、カボチャ、トウモロコシ、エダマメ、オクラなど
〈おすすめの作物〉
ミニトマト
【植え付け】4月〜5月
【収穫】6月〜8月
育てるのが比較的簡単で、何度も収穫できる、特に人気の野菜です。水を少なく育てると甘くなり、わき芽を残すと収穫量が増えます。品種も多く、薄皮品種だと皮が口の中に残らないのでおすすめです。
ゴーヤ
【植え付け】5月
【収穫】7月〜8月
独特の苦みがあり、グリーンカーテンとしても人気があります。育つのが早く、実もよくなるため、ツル性野菜の中でもとても育てやすい野菜です。気温が高く猛暑であっても元気に育ちます。実をつけるための人工授粉が必要なことを覚えておきましょう。
〈主な作物〉
キャベツ、ホウレンソウ、コマツナ、サヤエンドウ、ソラマメ、長ネギ、玉ネギ、ニンニク、ジャガイモ、ニンジン、ダイコン、カブ、ブロッコリー、カリフラワー、イチゴなど
〈おすすめの作物〉
ジャガイモ
【植え付け】3月〜4月 8月〜9月
【収穫】6月〜7月 11月〜12月
栽培期間が短く、収穫量も多いので、育てやすい根菜です。苗ではなく、種イモから育てます。植え付けタイミングは初春と晩夏の年2回。水分を多く含み腐りやすいので、高畝などで水はけを良くしましょう。光に当たると毒素が発生するため「土寄せ」が必須です。
イチゴ
【植え付け】9月〜10月
【収穫】4月〜5月
比較的寒さには強いですが、日陰では育ちにくいため、日当たりのいい場所で育てましょう。「ランナー」と呼ばれる細い茎が出て、子株や孫株が増えていくのが特徴です。確実に実をつけるための人工授粉も必須なので覚えておきましょう。
土づくりは野菜を育てるうえで、とても重要なポイントです。面積が広い場所で育てる方や本格的にやってみたい方は以下の方法を参考にしてみてください。
@土壌改良材を使って改善する
いい土とは、ふかふかで水はけのいい土のこと。土の通気性や保水性を高めて、微生物を増やすために土壌改良材を使用します。土壌改良材には牛糞堆肥や、腐葉土や樹木の皮を発酵させて作ったバーク堆肥などがあります。バーク堆肥はニオイも少なく、土壌改良効果が高いのでおすすめです。
初めて家庭菜園に挑戦する方や、狭い範囲で育てる方は、そのまま使える市販の培養土を使うと簡単です。
A石灰を使って土壌酸度を調整する
野菜の生育には弱酸性から中性の土壌が適していますが、雨が降ると土が酸性寄りになり、植物が肥料をうまく吸収できない状態になってしまいます。土壌酸度を調整するために、石灰をまきましょう。そうすれば中性やアルカリ性に傾き、植物が栄養を吸収しやすくなります。有機石灰や苦土石灰、消石灰などいろいろな種類がありますが、有機石灰を選んでおけば間違いないでしょう。
B畝を作ってビニールマルチを敷く
50cmほどの幅で畝を作り、その上にビニールマルチを敷きます。
マルチシートを使うことで、雑草が生えるのを防ぐメリットがあります。また保湿効果もあるので、頻繁な水やりの必要もなくなります。
種から育てるメリットは価格が安いことと選択肢が多いことです。その反面、量が多くて使いきれない、栽培が難しい等のデメリットもあります。育てやすく、収穫量が期待できる苗の方が初心者には使いやすいかもしれません。
■種
ホームセンターで販売されている種は、どちらかというと農家向け。家庭菜園だと使い切れないかもしれません。一方、100円ショップで売っている種も品質がよく、量もちょうどいいのでおすすめです。
■苗
ホームセンターで苗を選ぶ際は、葉の枚数が多く、病気の症状がないものを選びましょう。
どの野菜も葉が多いほど元気に育ちます。その逆に、生育がよくないものは葉が小さかったり、取れて少なかったりします。
■肥料
肥料には、苗を植える前に土に混ぜておく元肥と、途中で与える追肥の2種類があります。畝を作る前に土壌改良材や石灰を混ぜ、その際に肥料も混ぜておくケースや、2週間後くらいに肥料をまいて苗を植えるケースがありますが、有機石灰を使う場合はすべて同時でも大丈夫です。
苗を植えて、ひと月後に肥料を株元に埋めて追肥をするイメージです。使う量は、肥料の種類と野菜の種類によって異なります。肥料のパッケージに野菜ごとの「目安」が記載されているので、参考にしてください。
化学肥料であれば効果が3か月ほど続く「緩効性化成肥料」がおすすめです。「オーガニックで育てたい」という方には、有機肥料の「発酵油かす」をおすすめします。これは、菜種油などを作る際、植物を搾ったあとに出るかすを発酵させたもの。ニオイもそれほど気にならず、たいていの野菜に使えますよ。
■水やり
土が乾いていたり、葉が萎れていたら水やりのサイン。真夏には、朝と夕方の2回たっぷりあげましょう。雨が降れば、与える必要はありません。その逆に、冬は土がなかなか乾かないので、天気によっては週に1回でも大丈夫です。
■古い葉を取る
野菜は新しい葉をどんどん出します。一般的に若い葉ほど光合成の能力が高く、古い葉ほど能力が衰えます。枯れたり、色が悪くなってきた葉は取ってしまったほうが、病気や害虫を防ぐことにもつながります。
このほかにも、雑草むしりや害虫の駆除、病気の治療などのお世話が必要です。
■枯れる
初心者によくある失敗に、「枯らしてしまう」ことが挙げられます。これは、水のやりすぎや水やり不足が原因です。野菜の種類や土の状態などに注意して水やりを行いましょう。また「毎日の水やりが大変」という方は、お庭の蛇口に取りつけて自動で水やりができるグッズを活用するのもよいですね。プランターで育てている方には、ペットボトルに取り付けるタイプの自動給水キャップがおすすめです。
■折れる
ミニトマトやトマトは強風で茎が折れてしまうことがあります。このため支柱にしっかりと固定する必要があるのですが、作業の最中に誤って折ってしまうことも。折れた茎はテープで補修することができ、挿し木をすれば新たに根を出すので再生することが可能です。
■人工授粉が必要かどうか
ミニトマトやナス、キュウリは人工授粉しなくても実がなるのですが、ゴーヤやスイカ、メロン、イチゴに挑戦して「人工授粉をせずに実ができなかった」というケースがよくあります。育てている野菜に人工授粉が必要かどうか、事前にチェックしておきましょう。
■十分な間隔をとって植え付ける
株間は野菜によって違います。例えば、ミニトマトの苗はおよそ20cmですが、育つと2m前後まで大きくなります。ナスの場合は、横に1mくらい広がります。野菜の生育を想定して、十分な間隔をとって植えるようにしましょう。植える野菜の株間を事前に調べておくことが大切です。
家庭菜園を始めるにあたってのポイントをご紹介してきました。野菜の栽培には楽しめる要素がたくさんあります。どんどんステップアップも楽しんでくださいね。