第2回 学生デザインコンペ受賞作品

最優秀賞

Glass Straw Roof

上田 満盛(大阪市立大学大学院)
大坪 良樹(大阪市立大学大学院)


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コンセプト

茅葺屋根は優れた環境性能が認められているが、なにより周辺住民を募って「葺き替える」という行為に、共同体としての建築の姿があった。茅の代わりに耐火性に優れるガラス繊維を用いれば、都市部の建築はそのような営みを取り戻せるのでないだろうか。

優しく照らされた大屋根の下に集う人々と暮らし、時折皆で屋根にのぼりガラスの糸を束ねる。ガラスはもはや強度や透明度によって人との距離を調節する材料ではなく、人々を直接つなぐ材料なのである。

ガラス長繊維は優れた複合材料を生み出し、あらゆる製品に使用されている。しかし、その強度の高さから処理が困難であり、不法投棄の要因ともなっていた。現状では、特殊な処理後に埋め立てるのが最良とされている。

ガラス長繊維を費用をかけて短期的に処理するのではなく、建築を介して時間をかけて劣化させる。それが適正に処理される時期になれば建築も更新され、それが住民と地域の人々を結ぶ営みとなる。

講評

審査員長 西沢 立衛 氏

 最優秀となったglass straw roofは、住宅地の只中に忽然と登場する、透明藁葺き屋根の建築である。全応募案の中ではこれがもっとも、出来上がった姿を見てみたいと思わされた案であった。課題テーマにあっているかどうか?という疑問はなくもなかったが、機能的なことの説明をせずに、それが皆のための地域の場であることを暗示する力をもつ建築で、魅力を感じた。ただ、皆でグラスファイバーを葺き替えることで共同体の結束を強めるというところは、無理があると感じた。

審査員 大西 麻貴 氏

 街の中にある半屋外の大きな屋根の下に集まる、という素朴でやさしい魅力が評価された。屋根は半透明のガラス繊維で出来ているため、茅葺きから連想されるどっしりとした重たい暗い屋根とは異なって、不思議とやわらかく明るい光に溢れたイメージがあった。そんな光に溢れた空間が町の中に佇んでいる様子も、よいのではないかと感じられた。

審査員 百田 有希 氏

 ガラス繊維で出来た茅葺屋根が魅力的。柔らかい光に包まれた状態はどんな感じだろうと思わず想像してしまう。屋根が浮かんでいて、前の通りが屋根の下まで入りこんでいるのも良いなと思った。

 また「ずっといたくなる場所」というテーマに対して、街の中のサロンのような建築を提案しているのが良い。ずっといたくなる場所には、大勢でずっといたくなる場所や、一人でずっといたくなる場所などいろいろあると思う。この提案では、顔が見える関係の中で、みんなと共有することで生まれてくる居心地の良さをつくろうとしていて、その点が良いと思った。

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