第2回 学生デザインコンペ受賞作品

優秀賞

湾を巡る ―クジラ・イルカがつなぐ街の誇り―

保坂 整(東京工業大学大学院)


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コンセプト

基本対象者は和歌山県太地町の町民(特にイルカ追い込み漁に関わる人々)、観光客。設計施設は漁港、捕殺場、水族館、それらをつなぐ遊歩道。利用の仕方は通常の漁業はもちろん、特にクジラ・イルカに対して、漁、飼育、展示、研究を行うことである。プロジェクトの目的は太地町では3つの各湾に対して漁港、捕殺場、水族館がすでに機能として割り当てられている。それらをそのまま活かし、沿岸部を回る遊歩道がつなぐ。400年の歴史はただ簡単に続いてきたのではなく、いくつかの存続の危機を乗り越えて今に至る。これは今回のテーマ文の一部である「ずっと…」という言葉をより鮮明に述べているのではないか。ずっと居たくなる場所を作る建築は長い時間と呼応したり、時には耐えたりとある種の強さを持っていると思う。そこで、太地町の追い込み漁を建築の力で存続させることで太地町民にとっての誇りを失わずにずっと居たくなる場所作ることを目的とする。

講評

審査員長 西沢 立衛 氏

 優秀賞となった「湾をめぐる-クジラ・イルカがつなぐ街の誇り」は、イルカ追い込み漁で知られる和歌山の小さな町を、どうやって盛り立ててゆくか、という提案である。「ずっといたくなる場所」というお題に対して、建物や空間単体、建具といったことで答えるのではなくて、街全体で答えようという姿勢が、全応募案の中でも際立っていて、魅力を感じた。提案の中心にあるテーマがもつ社会性も、本提案の重要な個性になっている。空間的な提案がこれに加われば、より魅力的な案になるのでは、と感じた。

審査員 大西 麻貴 氏

 ずっといたくなる場所、というコンペのテーマに対して、建築一つで居場所をつくる提案でなく、地域への愛着や誇りを育みずっといたくなる街を作って行く提案をしたところが他の案には無い魅力であった。このような提案は、どのくらいその街に本気で向き合い、愛情を込めて取り組んでいるかが大切だと思う。提案している街の人の顔や、そこで営まれている生活、受け継がれてきた文化、現状の問題点やこれからの展望等、魅力的な空間とともにもっと詳しい提案を聞いてみたい。

審査員 百田 有希 氏

 「ずっといたくなる場所」というテーマに対して、残すべき集落や文化を取り上げている点が他の案と際立っていた。ただその取り上げ方が少しジャーナリスティックで外部からの視点に感じられたのが気になった。「ずっといたくなる」という感覚はもっとポジティブで自発的なものだし、身体的な感覚や思いから生まれるものだと思う。この提案によって、どんな風に人々の間に共感や愛着が育まれていくのかが伝わってくるとよりよかったのではないかと思う。

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