YAKAN MEETS THE WORLD

即席麺マニア

世界の果てまで即席麺ハンティング。
麺への愛は海を越える。

日本で唯一のインスタントラーメン専門店を経営する「株式会社やかん亭」の代表・大和イチロウ(やまと いちろう)さん。学生時代に即席麺の魅力に目覚めてから今もなお毎日インスタント麺を食べているとのこと。即席麺への探究心は国内にとどまらず、海外の製品にもおよび、今まで食べた種類は7500種を超えるほど!今回はそんな大和さんの即席麺愛あふれる日々の暮らしや、おいしい即席麺の作り方などを紹介します。

“即席麺は体に悪いと思われているのが悔しかった。”

  • 全国の即席麺がそろう「やかん亭」ですが、
    できたのはいつ頃のことですか?

    大和:2007年ですね。それまでは、鍼灸の仕事をやっていたんですよ。

  • 鍼灸?意外ですね!

    大和:そうですね。事故をしてから、そもそも記憶って何だろうということに興味があって、大学では心理学を専攻していました。それで心だけじゃなくて体のことも知らなきゃいけないとわかってきたので、大学を出てから3年間、東洋医学を学んで国家資格も取ったんです。

  • そこからなぜ、「やかん亭」を?

    大和:なんかね、患者さんに「毎日ラーメンを食べてる」って言うと、「そんな体に悪い物を?」「先生おかしくないですか?」みたいに言われるんですよ。

  • なるほど(笑)

    大和:でも「おかしいな、一回も健康診断で引っかかったことないのにな」ってずっとそれが疑問だったんですよ。それで、その疑問を解決するためには、やっぱり専門店を作るしかないなと思って。

  • 探究心や、好奇心の延長なんですね。

    大和:そうですね。即席麺が本当に体に悪いのか、疑問だったんですよ。元々、健康にはかなり気を遣っていたんです。ただ自分の好きなものを食べていて、それを否定されることに対する悔しさみたいなものがあったんだと思います。

  • そんなに悪いの?ってなりますよね。

    大和:あと工場で働く方や職人さんの話を聞くと、即席麺には食の伝統技術が徹底的に詰め込まれていて、この魅力を伝えていきたいと思ったのも理由の一つにあったように思います。

  • 即席麺への愛が高じてできたお店なんですね。

    大和:そうですね。このままだとこの技術も失われるな、という焦りもあって、お店を作りました。

  • 反響はどうでした?

    大和:実を言うと、最初はほとんど大した反響がなくて。ご存知の通り、スーパーでは大手メーカーさんの袋麺を5袋298円ほどで売っています。一方ここではご当地麺を1袋300円ぐらいで売っているわけです。もちろん、仕入れたご当地でもそれくらいの値段が当たり前なんですけど、普通はその価格差にびっくりしますよね。だから最初は、うまくいってなかったんです。

  • でも、かなり今は話題になっていますよね。

    大和:やっぱり口コミが一番大きかったですね。ブログやSNSなどで拡散されるようになって、徐々に広まっていったという感じですかね。

  • お客さんはやはり男性が多いんですか?

    大和:最初は、男性オンリーでした。ほぼ100パーセント。でも徐々に女性が増えてきて、今はイベントなんかだと8割が女性ですね。

  • それは即席麺に対するイメージが変わってきたから…?

    大和:元々、即席麺に対する評価があまりにも悪かったというのがあると思うんですけど、近年はおうち時間が増えた影響もあるかもしれません。あとは、やっぱり長期保存ができて、袋麺の場合はゴミが少ない。そしてまとめて作れるから保存食として最適なんですよ。

  • 確かにそうですね。

    大和:はい。子どもも喜ぶし、野菜なんかも放り込み放題。そうなったときに「こんなに便利なものがあるならこれでいいじゃん」ってなるんですよね。

“即席麺はその国の「お母さんの味」なんですよ。”

  • かなり即席麺について研究されているようですが、
    海外にも行かれたりするんですか?

    大和:そうですね。やはり海外は日本と全然違いますね。海外は基本的には「すする」という文化がないので、麺が短い。日本だとだいたい50~60センチあるんですが、海外は15センチくらい。

  • そんなに短いのですか?半分以下ですね。

    大和:まずは、そこに驚かれる方が多いですね。あと、味がローカライズされているので、国によってかなり味が違います。日本にはない香辛料や味を作り出しているので、即席麺を食べるとそこの国民の味を知ることができるのも一つのポイントですね。

  • 国民の味?

    大和:基本的には、即席麺って、大衆に受ける味でできているんですよ。そのベースになる味が何かって言うと「お母さんの味」。その国で一番多く使われている調味料です。

  • つまり、即席麺を食べればその国で愛されている味がわかると?

    大和:はい。例えば日本人だったら醤油を使うことが圧倒的に多いですよね。インドだったらガラムマサラになりますし、タイだったら魚醬になります。

  • それは面白いですね。全部自分で行って調べるんですか?

    大和:そうですね。コロナ禍前までは、結構行ってましたね。年に4~5回くらいでしょうか。

  • それって、即席麺を食べるためだけに行くんですか?

    大和:そうですね。あとは日本に買って帰る目的もあります。最近、結構大きめのスーツケースを買ったんですよ。それで、行きは中身が空っぽの状態で行くんですね。

  • 空っぽで?

    大和:捨ててもいい着替えとか最低限の荷物だけ詰めて。何をするかっていうと、現地でそれらを全部捨てて、代わりに即席麺をぎゅうぎゅうに詰めて帰ってくるのです。

  • (笑)

    大和:そうするとね、まず行きに空港の検査でとめられるんですよ。だって空のスーツケースの旅行者って怪しすぎますからね。そして、帰りも中身が即席麺だらけなんでとめられます(笑)

  • そんなときどうするんですか?

    大和:まず別室に呼ばれるんですよ。大体いつものパターンとしては、「1個か2個食べてみろ」って言われて、そこで食べるんです。で、「この国の即席麺は最高だ」とか言ってたら、解放してくれます。

  • ただの即席麺マニアだとわかるんでしょうね。

    大和:そう、「なんだ、ただの即席麺マニアか」って(笑)

“僕の体は即席麺でできているかもしれない”

  • 即席麺に対する愛の深さがわかりました。

    大和:自分でも普通じゃないな、って思うときがあるくらいです。

  • それはどんなときですか?

    大和:仕事で袋麺の開発をしているし、それはビジネスなんですよ。それに「疲れたな。作るのが面倒くさいな」って思っていたら、無意識にカップ麺に手を伸ばしていますね。

  • 仕事で袋麺に接しているのに?!

    大和:カップ麺を食べて1回リセットするんです。カップ麺が趣味で袋麺はビジネスなんだな、と思いました。なんか、ホッとする瞬間に実はまた即席麺があるんですよね。それに気付いたとき「なんかずっとハマってるな」って。

  • 記憶喪失した頃から?

    大和:はい。結構調べた時期もあるんですよ。即席麺に中毒性があるんじゃないかって。結果「ない」とわかったんですけど。そして、そばとかうどんとかと違って、ラーメンが飽きないのはいろいろな旨味があるからだと気が付いたんです。鶏であったり、豚であったり、わかめとかの海藻であったり、それぞれ旨味成分が違うんですよ。良くできているなと思いましたね。

  • 確かに、バリエーションがありますよね。

    大和:みんな、ラーメンという大きな括りで見ているんですよ。でも僕からしてみれば、ラーメンも全部違う食べ物。そこは認識が違うなと思いますね。

  • この先、即席麺しか食べられないと言われたらどうします?

    大和:全然、食べる自信があります。3食だろうが5食だろうが全部即席麺でもいけます。逆に即席麺が食べられなくなったら生きていくことができないかもしれないです(笑)

  • もう体が麺でできているくらいの感じですね?

    大和:そうですね。もう髪の毛一本一本が麺でできています(笑)

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前回「外ラー」のお話をしましたが、おうちでラーメンを食べるときもこだわりがあります。袋麺を調理するときは、お気に入りの四角い鍋を使っています。丸い鍋が一般的だと思うんですが、袋麺を作ってスープを注ぐときに長年使っていると変形してくるんですね。その点、四角い鍋は形が変わらずきれいに注げるんですよ。飲み物は味の邪魔をしない水がメーカーからも推奨されています。みなさんもいろいろ試しながら、おうち時間を楽しんでみてください。

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