DIYや整理収納術を紹介するブログ「なつめの手仕事日記」が大人気の夏目あや子(なつめ あやこ)さん。おうちを育てる「おうち育」という考え方を提唱し、2012年に建てた自宅でも毎日のように模様替えや新しい家具作りなどをされています。今回はそんな夏目さんがDIY好きになったきっかけや、楽しく取り組むコツなどを紹介していきます。
“DIYの原点は、妹との二人部屋です。”
-
何かを作ることに興味を持ち始めたのはいつごろですか?
夏目:多分小学生だと思います。そのころ、住んでいた家の建て直しをしたんですよ。そのとき「あ、面白いな」と思ったことがあって。
-
家を建てることがですか?
夏目:いえ、実は父親がちょっと変わった人で。家を建てている間、別のところに住むじゃないですか、3~4カ月。うちの場合は、隣に昔工場で使ってたプレハブがあったんですけど、そのプレハブに夏の3カ月くらい住んでたんです。まあまあ広かったんですが、お風呂がないからお風呂屋さんに通っていたわけです。ある時、父が自力で物置にシャワーをひいたんですよ。なんか外の水道を持ってきて。なんでお湯が出るんだ?と思っていたら「給湯器つなげたから」と。
-
すごい人ですね。
夏目:そういう人だったんです。自力でどうにかなることは、自分でやる。小学生のときこういうのって自分で作れるんだ、と思った記憶があります。
-
ご家族の影響が大きいのですね。
夏目:そうかもしれないです。あとは母もインテリアが好きで、家でもいろいろ触っていたんですよ。そのとき母の読んでいたインテリア雑誌は私も好きで、すごい古い感じのカントリー調だったんです。その影響なのか、私もアンティーク趣味というか古い物が好きですね。今、家にあるのも古道具ばっかりかな。例えば「棚を買おう」となったとき私は普通の家具屋さんへ行くよりもリサイクルショップをまわる方が好きなんです。
-
今はアンティーク趣味って一般的ですけど、当時は珍しかったでしょうね。
夏目:そうかもしれません。世間でも急に流行ってきてビックリしています。こんなこと今まで話してこなかったのですが、話しながらルーツは母なんじゃないかなと思ったりしますね。
-
実際にDIYをやるようになったきっかけって、何かあったのですか?
夏目:妹との二人部屋を与えられたことかな。部屋を模様替えしたり、必要な家具を作ったり、塗ってみたり、自分でいろいろ変えることに目覚めたのが高校生くらい。実は、高校時代に作ったものはまだ実家にあるんですよ。
-
そうなんですね!ちなみにそのときは何を作ったのですか?
夏目:つい立てみたいなものです。妹と二人で12畳の広さだったんですよ。でも妹が散らかすのでちょっと境目がほしくて作ったのです。父が残してくれていたものを見るまでは忘れていましたが、切る作業などは多分父がやってくれたと思います。でも、金具をつなげて、ペンキで塗ってというのは自分でやった記憶がありますね。そうした経験があって、建築の世界に進みました。
-
大好きな「作ること」を仕事にされたわけですね。
夏目:でもやっぱり大工や職人じゃないから「自分は作れないな」と思ったことはありました。上から見た設計図を書く仕事なんだな、って。その後、仕事は辞めたのですが、多分そういうギャップを感じていたこともあったのかもしれません。
-
本当にしたかったことは、実際に手を動かして作ることだったと。
夏目:そう思いますね。DIYをやり始めたのは結婚してからで、一番上の娘が赤ちゃんのときです。最初はハンドメイドの編み物だったのですが、作った作品を並べる什器や机、台といったものを作るようになりました。ブログも最初は編み物のブログでしたが、断然こっちのほうが面白くなってきたのでシフトしたというのはありますね。
“この家に完成はないかもしれないです。”
-
DIYって毎日されるのですか?
夏目:多分毎日作っていると思います。大きい物から小さい物までさまざまで。DIYでモノを作って記事にするお仕事もしているので、そういうのも家の中でやっているから子どもから見れば「いつもなんか作ってるお母さん」みたいな感じですね。だから、帰ってくるたびにたえず変化がある家なんですよ。間違い探しみたいになってます(笑)
-
住まいそのものにも手を入れられるのですか?
夏目:はい。建築をやっていたから惜しげもなく新築に穴を開けられるのだと思います。怖いからできないって方は多いですよね。まえに、うちに遊びに来てくれた人に、「壁紙をはがしたらどうなっちゃうかわからなくない?」って言われたことがあるんです。その時、「どうにもなんないよ~紙がはがれるだけだよ!」って答えたことがあります。たぶん、ある程度はどうにかなると思ってる節があります(笑)
-
(笑)毎日手を入れて、もう変える場所がなくなったりはしないのですか?
夏目:今直したいところと言われたら20個くらいでてきます。あそこをこうしたいな、こうやったらどうかな、と常に考えて生きているので。完成しないかもしれないですけれど(笑)
-
家をもっと便利にしたい、快適にしたいという感じですか?
夏目:もちろん整理収納とか、暮らしを快適にするためのDIYもあります。でも、快適さだけを求めるのであればもっと物が少ない方がいいですし、掃除しやすい棚の方が楽ですが、そういう方向にDIYすることはないです。求めているものとは違うというか。
-
夏目さんが求めているDIYってどういうものですか?
夏目:例えばこの天井のライト。もともとは1つだったのですが、あとから自分でレールなんかも取り付けて3つにしました。これはもう快適さよりも私の見た目の好みが変わったからなのです。6割は快適さを求めて、あとの4割は私のインテリアの趣味が変わったから、ということですかね。
-
インテリアの好みが変わることってあるのですか?
夏目:というより、自分が暮らしたいな、と思う家のイメージがちょっとずつ変わるのです。年齢のステージとかに合わせて。例えば、この家も10年前と今とでは全然違うんですよ。ベースの雰囲気は一緒なんですけど。子どもの成長に合わせていろいろ作ってみたりとか、使ってみたら違うというのもあったりして、解体して作り直したりもするので…。ネタは切れないと思います。多分このあと10年もきっと作れると思います。
-
作ったものはブログでも紹介されてますよね。どういう理由で続けていらっしゃるのですか?
夏目:う~ん。残しておきたかったのはありましたね。そのときしか書けないことなので、記事で残しておけば10年経っても結構鮮明に思い出せたりするし、子どもたちにも見てもらえるから。当時は、自分でこういう仕事をするって思ってなかったです。
-
ブログを書き続けていく上で気を付けていることはありますか?
夏目:3番目の子どもが生まれたくらいのとき、ブログでまあ多少収益があるということから「これ仕事なんだな」と意識するようになりました。内容もちゃんと需要がありそうなものを選んでいます。途中、日記みたいなのもありますけど(笑)
-
でも読んでいると楽しいですよ。
夏目:ありがとうございます!なんか楽しいと思ってもらえるようには気を付けています。あんまり小難しく書かないようにとか。あとは、失敗したときには「失敗しました」ってブログにあげたりもします。
-
え? 失敗するんですか?
夏目:しますよ(笑)。「作ってみたらなんか違うな」って思うこと。全部が成功ってわけではないから。
-
できるだけ失敗しないためにしていることってありますか?
夏目:木材を使うときは、最近はホームセンターで切ってもらったほうがきれいに切っていただけるのでよく利用します。家にある丸鋸だと難しくて。切ってもらったほうが楽です。ホームセンターに何人か顔見知りの店員さんがいて、「また来たな」「今度は何やってるんだろう」って思われているかもしれません(笑)
“家族みんなで「作る」を面白がっています。”
-
DIYの魅力ってどこにあるんでしょう?
夏目:よく聞かれる質問ですが、いつも悩むんですよね(笑)もちろん既製品でもいいものはある。でも変な話「ほしいものは高い」です。アンティークを買いたいけど、全部買ってたら予算が合わないんですよね。こうしたいと思ったことが既製品ではかなわないからこういう状態になっていると思うのです。自分で作ると思い通りになりますよね。
-
自分で作ればイメージが形になると。
夏目:既製品って何割かは妥協する部分って出てくると思うのです。けど、自分で作るってなると「こういうのほしかったんだよ」と思ったものが作れる。あとはまあ、子どもたちが小さかったこともあって。「お金があれば買える」「買ったら終わりじゃない」ってことが伝わればいいなと思ってました。
-
じゃあ、DIYをするときはお子さまもご一緒に?
夏目:はい。小さいときはやりたいことは大抵のことはやらせていました。外の砂場も物置の壁塗りも一緒にやりました。
-
お子さまがいる、ということが大きいんですね。
夏目:子どもがいなくてもやっていたと思いますが「どういう風にしようか」と子どもと一緒に考えたり、作ったりするその共有する時間っていうのは今しか持てないと思います。
共有する楽しさというのはかなりあるかもしれないです。 -
お子さまも喜んでいらっしゃるんですか?
夏目:結構喜んでくれるんですよね。「どう思う?」「めっちゃいいじゃんそれ!」みたいな(笑)
-
ご主人もDIYすることには協力的だったりするんですか?
夏目:実は主人も建築系の大学出身なんです。今は全然違う仕事してますけど、大学が一緒で。ベースは一緒なんじゃないかな、ある程度は。なんなら若干マニアックなところは主人の方が得意だと思うことがあります。
-
では、ご主人も一緒に?
夏目:窓枠とかは主人が作っています。私はどちらかというと組み立て、ペンキ、リメイクが多かったです。当初は主人と一緒にやっていました。大きい物をやってもらったり、主人と一緒に組み立てたりしていました。
-
ご家族みんなで楽しんでいらっしゃるのですね。では最後に、そんな夏目さんがDIYマニアとして大切にされている考え方を教えてください。
夏目:「できないことはない」ってことかな。いつも主人と「それはお金がかかるのか、時間がかかるのか、もう少し技術が必要なのか差はあるけど、できないことはないから方法を考えるのもまあ面白いよね」という話をします。買って楽しむやり方もあるけれど、うちは作ったほうが面白い。それが家族と共有する時間になっているというか、生活の一部です。家族と過ごす時間の一部がDIYになっている。私にとってのDIYってそんな感じです。
DIYマニアのおすすめ商品
DIYはもちろん屋内でも楽しめますが、切ったり削ったりの大掛かりな作業は、広い方が適していますから、ガレージやお庭にちょっとした専用スペースがあると便利ですね。寒い季節のことを考えると囲いのあるガーデンルームも良さそうです。うちの場合は、家の外に小屋があって、DIYの作業はそこでやることも多いです。ウチとソトのスペースをうまく使い分けて、DIYを楽しんでくださいね。