三協立山アルミ株式会社
住友電気工業株式会社
大同特殊鋼株式会社
株式会社日本製鋼所
三協立山アルミ(株)、住友電気工業(株)、大同特殊鋼(株)、(株)日本製鋼所の4社は、平成16年度から独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以降NEDOと標記)の助成事業として行ってきた 「SF6フリー高機能発現マグネシウム合金組織制御技術開発プロジェクト 」を本年3月20日に終了し、基本的技術開発を完了しました。各社は引き続き、実用化への開発活動を継続します。
本プロジェクトは、京都議定書に定められた削減目標量の達成及びエネルギー消費を抑制しつつ持続的な経済成長を確保することを可能とする社会の構築を目標とする「地球温暖化防止新技術プログラム」の一環として実施されたものです。
マグネシウム合金は、アルミニウム合金より軽く、プラスチックよりも強い、剛性、熱伝導性、振動吸収性、電磁波シールド性に優れる、メタリックの高級感・高い質感を付与できる、リサイクルできるという特徴を有することから、近年、携帯電話やノートパソコン等の情報電子機器への適用が拡大され、省エネ化を推進する二輪車・自動車への需要拡大も進んでいます。
しかし、マグネシウムは活性な金属であり、溶解を伴う製造プロセスでは、大気との接触を遮断する防燃ガスとしてSF6が使用されています。このSF6はCO2の23,900倍もの地球温暖化係数を有するため、その使用の全廃が望まれており、今後のマグネシウム合金の需要拡大へ対応するために、SF6フリーなマグネシウム溶解・精製及びマグネシウム合金凝固プロセスの開発が強く望まれています。
また、マグネシウムは延性に乏しく、塑性加工が難しいため、現在、成形加工には、主にダイカスト法とチクソモールディング法が工業的に用いられています。さらに二輪車、鉄道車両および自動車等の構造部材へ適用を進めるために、より延靭性に富む展伸(押出、圧延、引抜、鍛造等)系の材料が求められており、その機械的性質をアルミニウム合金同等レベルに高める最適成形加工プロセスの開発が強く望まれています。
本プロジェクトは、これら開発ニーズに沿うべく、カルシウム添加によるマグネシウム溶湯の防燃及び製品の難燃化を図ることで、SF6の全廃を目指すとともに、アルミニウム合金より軽量かつ同等レベル以上の機械的特性を有する成形加工品を製造する加工技術を開発することを目標としました。
【研究開発の内容と体制】
本プロジェクトの研究開発の内容は大きく分けて、下記の2項目になります。
(1)SF6フリーマグネシウム溶解・精製および、マグネシウム合金凝固プロセス技術の開発
量産レベルでのSF6フリーマグネシウム溶解・精製および、結晶粒を微細化するマグネシウム合金凝固プロセス技術の開発。
具体的には、Ca添加によるマグネシウム溶湯の難燃化技術、不純物分離技術、脱ガス・介在物分離技術を量産レベルで開発し、成形加工用素材の結晶粒を微細化するための凝固組織制御技術を量産レベルで開発する。
(2)マグネシウム合金の機械的性質を高める成形加工プロセス技術の開発
SF6フリーマグネシウム溶解・精製、およびマグネシウム合金凝固プロセスで得られるマグネシウム合金の機械的性質をアルミニウム合金同等レベルに高める成形加工プロセス技術の開発。
具体的には、Ca添加マグネシウム合金(AZ,AM系)の押出し、引抜き、圧延、複合加工等の高靭性化展伸加工プロセス技術、高クリープ抵抗化射出成形プロセス技術、および、高剛性化複合加工プロセス技術を開発する。
以上の開発項目を下記体制にて推進しました。すなわち、(1)は三協立山アルミ、(2)は押出しを三協立山アルミ、引抜きを住友電工、圧延を大同特殊鋼、複合加工を日本製鋼所が担当し、それぞれ目標値を設定して、産総研、長岡技術科学大学、東京電機大学、豊田工業大学と共同研究を行い、金属系材料研究開発センター(JRCM)に適合性調査研究を委託して、実用化のための研究開発を進めてきました。
【研究開発目標と成果】
(1)SF6フリーマグネシウム溶解・精製および、マグネシウム合金凝固プロセス技術の開発
本研究の達成目標は、不純物Fe含有量30ppm以下、結晶粒径100μm以下の6インチ成形加工用マグネシウム合金素材のSF6フリー製造技術を、量産レベル(300kg/バッチ)で開発することである。研究開発の結果、約700kg/バッチ級の量産レベルで12インチ級にてSF6フリー化を達成し、他の目標もほぼ達成した。
(2)マグネシウム合金の機械的性質を高める成形加工プロセス技術の開発
本研究の達成目標は、以下の通り。
- イ)引張強さ(MPa)×伸び(%)≧5300の機械的性質を有する引抜き材、圧延板材を試作可能な高靭性化展伸加工プロセス技術を開発する。
- ロ)クリープ伸び≦0.5%(温度:170‐250℃、圧力:50MPa、負荷時間:100時間)の機械的性質を有するマグネシウム合金成形材を試作可能な射出成形プロセス技術を開発する。
- ハ)引張り強さ(MPa)≧485の機械的性質を有する形成材を試作可能な高剛性化複合加工プロセス技術を開発する。
研究開発の結果、イ),ロ)は達成した。ハ)については引張強さ約400MPaと未達であったが、構造材用アルミニウム合金同等レベルの機械的性質を持つマグネシウム合金の成形加工プロセスを開発することができた。
これらの成果を基に、参加各社は今後、実用化に向けて開発を加速しながらその活動を継続していきます。
−以上−
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三協立山アルミの取り組みについては、次の通りです。
・世界初 Mg合金鋳造新技術の確立(NEDO助成事業)溶解・鋳造、押出の一貫基盤技術を構築 |