第4回 学生建築デザインコンペ受賞作品

特別賞

匂いを紡ぐ土蔵

池田 勇輝(東京都市大学)
西宮 航平(東京都市大学)

コンセプト

 私の家には匂いがある。いつもそこに帰ると、長年住み慣れた匂いによって安心感を得る。私たちが考える「ずっといたくなる住まい」とは、そんな「匂い」を主とした愛着の持てる住まいである。対象敷地の赤羽は、武蔵野台地に位置し、駅の西側はすり鉢状の地形に豊かな地である。しかし現在再開発が進みつつある地域でもあり、一様な開発により町としての固有性が失われる可能性がある。かつて酒蔵があったこの街ではそんな酒蔵の匂いが街の愛着であった。私たちはそこから着想を得て、現代的な住宅に再解釈した。

 住宅で提案する土蔵柱は、住宅の主の構造体であり、時間の経過と共に地下の貯蔵庫の匂いを吸収し、この住まいとその街全体に広がる。土蔵柱からほんのり香その匂いは次第に住む人、街の人々の愛着となりずっとよりそっていたくなる。そしてその匂いは未来に引き継がれる。そんな住まいの提案である。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 匂いに着目して、親しみやすさやくつろぎ等と匂いを結びつけた点が異色であり、評価された。ただ、うまくいっていない点もいろいろあった。なぜ地下なのかとか、赤羽でなぜワインなのかとか、町じゅうがワインくさくなっていいのかとか、多少アイデアに押されてしまったきらいはあったが、しかし街の個性と匂いをつなげた点は評価したい。

審査員 大西 麻貴

 「匂い」に着目することで、中心に得体の知れない土の塊をもつ家を提案したところがおもしろかった。何か新しい民家の形式を提案しているようにも感じられたため、もう少し「匂い」というテーマ一本で全てを説明しようとするのではなく、ずっといたくなる家の可能性について広く、深く考えて提案してもらえるともっとよかったと思う。

審査員 百田 有希

 「匂い」という目には見えない感覚をきっかけに考えているところが面白いと思った。土蔵が単なる貯蔵庫ではなくて、家付き酵母のすまいとなり、お酒をつくったり、みそをつくったり、その家ならではの「味」や「匂い」を生み出す場所になると良いなと思った。世代を超えて引き継ぎたいものがあるということが、「ずっといたくなる」気持ちにつながるのではないかと思った。

審査員 白井 克芳

 ずっといたくなる住まいは愛着の持てる住まいと定義し、「匂い」をテーマとした面白さがあります。圧倒的存在感の土蔵により創り出される空間や雰囲気、香りから、様々な価値が提供され、そこに集う人々の人間性を醸造していきそうな魅力を感じます。また構成ダイヤグラムも全て自然素材に拘っている点も共感できます。

  • Facebook
  • Instagram
  • Twitter
ページトップへ