第3回 学生デザインコンペ受賞作品

最優秀賞

環境をハンティングしていくまち

田村 聖輝(横浜国立大学大学院)


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コンセプト

私にとってずっといたくなるまちは、人の日常的なふるまいとつながるまちです。例えばゴミ捨て場で近所の人から昔話を聞いたり、猫とぼうっと空を眺めてみたり、遠くのランドマークタワーを見ながら黄昏たり、各々のふるまいがまちの中のある場所と記憶に結びついています。横浜の木密では高密居住と地型の住み方に対して住民の暮らしのアイデアがたくさん詰まっていて、家だけでなく狭い道も各々の住人の個性によって彩られています。

私はこのふるまいを環境のハントと捉えました。

昨今の木密では災害や建替、空家等、法規的な諸問題が挙げられ、まちの更新に対する提案が求められています。木密をマクロな視点で見ると道路によって一つの共同体のようなものが見えてきます。

「まちの環境」をハンティングし戦略的な更新によって減災と、領域的に周辺を巻き込む事で、より活動的な家と通りを提案します。

講評(敬称略)

審査員長 西沢 立衛

 横浜の谷戸地形の木密地域における集住の提案である。斜面住宅地が造成されて家が立ってあちこちに生まれたへた地や隙間のイレギュラー形状がそのまま建築に転化されて、建築としてのダイナミズムになっているところが素晴らしく、総合力の高さも相まって見事一等賞に輝いた。今回の応募案の中で審査員全員にもっとも強く推された。しかしこのタイトルだけは何とかならないものだろうか。

審査員 大西 麻貴

 木造密集地である戸部をリサーチし、街がどのように愛され、使いこなされているかという様々なアイディアを取り込み集合住宅の設計をしている案。模型写真を見ると空間のあちこちに戸部でこそ生まれるべき楽しそうな居場所がたくさん生まれていること、それらが既存の街の道や段差にうまく接続していること、一つの建築をつくることが周辺全体の環境を変える可能性のある提案となっていることがよかった。

審査員 百田 有希

 一つの建築の提案によって、その街の特徴が浮かび上がったり、街が抱えていた構造的な問題の改善につながっているところが良い。戸部の木造密集地でたくましく使いこなされてきた不整形で不揃いな隙間や段差が、新しい建築の空間の提案につながっているのも良いと思った。

審査員 白井 克芳

 従来法規的な制約により低価値となっている区域(道路に面しない奥まった土地や狭小地など)をマクロに捉え、これまで地域を彩ってきた文化の復興や更なる隆盛を踏まえながら、その土地を有効に効果的に価値再生していく提案は、狭い国土の日本が現在抱えている土地活用問題に一石を投じる大作である。

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