第1回 学生デザインコンペ受賞作品

ビル・公共部門「ずっといたくなる図書館」

最優秀賞

街の間、屋根の連なり

小島 悠暉(名古屋大学)
東 瑞貴(名古屋市立大学)


拡大して見る

コンセプト

本設計の対象敷地は愛知県犬山市にある城下町の一角を敷地とする。この敷地は東側の観光地として賑わう参道と東側の静かな住宅地の道路に挟まれた二面性をもつ敷地である。この二面性を繋ぐ、地域の住人と観光客の両者の居場所となる図書館を提案する。

それぞれの道沿いには路地のような隙間が存在し、その奥に繋がる図書館の様子が隙間から垣間見え、奥の図書館へと人々を誘う。

街へと連続するように大小様々な屋根が連なり重なることで、どちらの建物の空間なのか、内なのか外なのかわからないような曖昧な空間をつくりだし、参道側と街側をつなぐ。

この二つの操作により人々が滞留し、様々なアクティビティがうまれる。

講評

審査委員長 西沢 立衛 氏

 観光客で賑わう歴史的地区で、街のひとと外のひとが交流できる図書館の提案。空間構成はとくに新しいものではないが、各場所を丁寧に設計していて、全体として魅力的な建築になった。ただ柔らかい瓦という提案は、個人的にはどうかと感じた。

審査委員 百田 有希 氏

 街と図書館が一体となった提案が数多くある中で、この案は描かれている一つ一つのシーンが具体的で魅力的なのが際立っていました。本棚に囲まれた路地のような空間があったり、縁側で子供たちが遊ぶのを眺めながら本が読めたり、屋根の隙間から垣間見られる街の風景が、家の書斎で過ごしているような居心地の良さを感じさせてくれたりと、子供から大人、おじいちゃんまで、どんな人が来ても居場所がある親密で魅力的な空間になっていると感じました。敷地も参道と住宅街をつなぐよう設定されていて、参道から路地を通って家の延長のような親密な空間に出会ったときを想像すると、観光を忘れて少し休憩していこうかなという気分になります。

審査委員 松原 亨 氏

 屋根裏部屋、縁側、街の路地。共通点は「屋根」あるいは「軒」の存在を直接的に感じられる場所だということ。人間は屋根の存在を感じると安心するようにできているかもしれない。伝統的な日本建築が屋根のデザインに腐心したことにも関係あるのでは?そんなことを考えさせてくれるアイデアだった。屋根を感じると人間は守られていることを感知してリラックスする。読書にも没頭できるような気がする。そういう心理的なメカニズムがあるように思う。

 ずっといたくなる図書館の空間を「屋根の存在感」を中心に考えたこのアイデアにとても惹かれた。

ページトップへ